ろくぶんぎ座流星群の母天体、発見か?
【2005年11月18日 国立天文台 アストロ・トピックス(163)】
最近の流星群研究の進展は目を見張るものがありますが、またひとつ、母親が同定されていなかった流星群の母天体が発見されたようです。
埼玉県在住のアマチュア天文学者の大塚勝仁(おおつかかつひと)さんらは、68センチメートル シュミットによるカテリナ・スカイサーベイで、2005年10月22日に発見された17等級の地球に接近するアポロ型の軌道を持つ小惑星 2005 UDが、ろくぶんぎ座流星群の軌道とよく一致していることを発見しました。この発見は国際天文学連合から速報として公表されました。
ろくぶんぎ座流星群とは、毎年10月上旬の昼間に出現する流星群で、主に電波観測によって、その活動が捉えられてきました。しかしながら、その軌道に一致する彗星や小惑星は、これまで見つかっていませんでした。今回、発見された小惑星 2005 UDは、まさしく流星群が活動する日時に地球軌道に接近しています。また、その周期が1.4年と非常に短いことも流星群の軌道とよく一致しています。最近、数多く発見される小惑星の軌道の中から、流星群に一致した天体を見いだした大塚さんの慧眼には、プロの天文学者の間でも感嘆の声が上がっています。
この発見を受け、台湾中央大学の木下大輔(きのしただいすけ)さんらは、台湾の鹿林(ルーリン)天文台 1.0メートル反射望遠鏡で、早速この小惑星を観測しました。その形状の解析からは彗星特有のコマを持っていないことがわかりました。
大塚氏らは、軌道進化を考えると、この小惑星が別の小惑星(3200)Phaethon(フェートン)とも関係があることを示唆しています。フェートンは、ふたご座流星群の母天体とされているもので、やはり小惑星として分類され、彗星活動は見つかっていません。いずれにしろ、周期が短いために彗星としては揮発成分を失ってしまったのか、これらふたつの小惑星が関係あるのかどうか、今後の研究が待たれるところです。