「若き画家たち」が描く、宇宙の色彩美
【2005年11月22日 Spitzer Space Telescope Newsroom】
この画像はNASAの赤外線天文衛星であるスピッツァー宇宙望遠鏡が撮影した、ペルセウス座にある反射星雲 NGC 1333の姿だ。4つの波長で撮影した上で、人工的に着色して合成した画像であるとはいえ、その色彩のコントラストは実に美しい。NGC 1333の中には数十個の生まれたての星が存在する。星雲の色(現実の波長を反映している)と構造がこれほどまでに違って見えるのは、それぞれの場所で星が違うふるまい方をして、周りの星雲の姿に変化を及ぼしているからだ。
NGC 1333はペルセウス座の方向にあり、われわれから1000光年離れたところにある。そこには、太陽のような星が数十個もある。ただし、ほとんどが100万歳未満と若く、周りの星雲を巻き込みながら変化している。その結果、NGC 1333の姿は混とんとしているが、可視光による観測では、このような光景は見ることはできない。若い星からの光の殆どは、星たちを生み出した濃いちりとガスの雲に覆い隠されているからだ。スピッツァー宇宙望遠鏡は、これらの天体から放たれる赤外線を観測することで雲を見通して、美しい画像と、星の誕生過程に関する情報を手に入れることができるのだ。
NGC 1333中の若い星は、2つの集団に分かれている。画像中左上の星団は赤い星雲に包まれていて、右下の星団は青とオレンジの星雲に包まれている。2か所の星雲は色ばかりか構造も異なるが、これは星団中の星が生まれてからの時間によるものだ。
右下の星団では、活動を開始した原始星から吹き出したジェットが周りの冷たい星雲と衝突した部分が黄緑色の筋模様となって現れている。研究チームによれば、一つの星雲中にこれほどの数のジェットが見られるのは初めてのケースとのこと。複雑に絡み合った筋模様を「解いて」、どの原始星からのジェットがどの筋に対応するのかを調べるのが課題だ。ジェットはやがて星雲を吹き飛ばしてしまい、これ以上星が誕生するのを抑制するであろうと見られる。
星雲がジェットに吹き飛ばされた結果が、まさに左上の星団の姿だ。星の周りはちりもガスも飛ばされて空洞状態になっている。外側のちりが、中の星々が放つ紫外線で暖められた結果、赤外線を放射しているのだ。
ところで、NGC 1333中の星のうち80個ほどの周りにちりの円盤が見つかっていて、惑星の形成につながるかどうかが注目される。驚くべきことに、これらの星々はたった4光年の距離の中に集まっている。われわれの太陽の場合には4光年強の距離に三連星が1つあるだけだというのに。だが、「太陽系もこんな場所にあればさぞかし美しい夜空が見られるだろうに」と思ったら大間違いだ。周りを包むちりに邪魔されて、スピッツァーのような赤外線望遠鏡を使わない限りその先の宇宙が見通せないであろう。この画像は大変美しいが、それが1000光年彼方の天体であることを幸運に思うべきなのかもしれない。
反射星雲 : 散光星雲の1タイプ。星間雲が恒星の光を反射して光っているもので、M78や、プレアデス星団(M45)を取り囲む青いガス星雲(メローペ星雲)、あるいはハッブルの変光星雲などがこれに当たる。輝線星雲(HII領域)でも、恒星の光を反射している成分があることも多く、入り混じっている場合がある。(「最新デジタル宇宙大百科」より)