星の生涯の断片を、動画で見る

【2006年1月10日 Rice University News

宇宙空間の天体は、地球上の物事と同様に刻一刻と移り変わるものだというのは、今や常識だが、私たちが見ることのできる天体写真からは、なかなかそれは実感できない。特に太陽系の外側の世界は何万年も観察を続けなければ動きが見られないように思える。しかし、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)を活用した科学者のグループによって、5年間のうちに天体の姿が変化する様子が動画で見られるようになった。


HH47のジェットの画像

HH47のジェットの画像(提供:Patrick Hartigan/Rice University)クリックで拡大

星雲の中のガスやちりが集まって星が生まれるとき、物質は一気に結集せずに、中心に向かってゆっくり落ち込みながら円盤を形成する。その際、何らかのメカニズムによって、回転に使われていたエネルギーが、中心から円盤に対して垂直方向に吹き出すガスの流れを作り出す。こうしたガスの流れは「恒星ジェット」と呼ばれ、結果的に円盤の回転に対するブレーキとなり、より多くの物質を中心に落下させることになる。このように、恒星ジェットは星が誕生する過程で重要な役割を持っていることは確かなのだが、その動きや変化については、ほとんど何も知られていなかった。

「一枚の画像を見て、いろいろと想像を巡らすことはできます。しかし、そうして思いついた仮説も、動画を見てしまえばすべて吹き飛んでしまうことでしょう」と語るのは、アメリカのライス大学のハーティガン教授である。彼の研究グループは、恒星ジェットが変化していく様子を、初めて動画として記録した。

動画は、1500光年離れた、ほ座にあるハービッグ・ハロー天体(解説参照) 「HH47」を撮影した、1994年から1999年にかけての画像をつなぎ合わせることで作られた。ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の高解像度と、5年間という歳月によって、恒星ジェットの動きが目でわかる動画が実現した。

恒星ジェットの中には、速く吹き出す物質の固まりがあれば遅いものもある。ガス同士が衝突することで、ジェットの中で巨大な衝撃波が生まれて、広がっていく。動画の意義について、ハーティガン教授はこう説明している。「スポーツの試合開始の写真を見ただけでは、何が起きたかほとんどわかりません。しかし、何枚かの写真をつなぎ合わせたとき、写真と写真の間隔が十分短ければ、選手やボールの動きがわかります。同様に、私たちの動画からは、ジェットの中でガスの固まりが様々な速度で動いている様子を追跡できるのです」

恒星の一生に比べれば、5年という歳月は非常に短い。しかし、スポーツにおけるワンプレーを写真で見るより動画で見た方が興奮するのと同様に、天文学者にとって恒星ジェットの動きが動画で見られることは注目に値する。

リリース元で、この動画を見ることができます。


ハービッグ・ハロー天体: 生まれたばかりの星をつつむ星雲。1946年から1947年にかけて、ハービッグとハローによって発見されたのが最初。原始星からの双極ガス流や、星間ガスから形成される。ハッブルの変光星雲が代表的。(「最新デジタル宇宙大百科」より)