急増光している超新星2006bpを山形の板垣さんが発見

【2006年4月10日 VSOLJニュース(153) / 国立天文台 アストロ・トピックス(202)4月14日更新

(VSOLJニュース)

(著者:山岡均さん(九大理))

星全体の爆発である超新星は、爆発から数日〜20日くらいで最も明るくなる極大を迎えます。超新星の極大前のようすは、まだそれほどくわしくはわかっていません。発見されるのが爆発後かなり明るくなってからになることが多く、また、望遠鏡のスケジュールや天候の都合で、発見後すぐに詳細な観測ができるとは限らないからです。

今日、急増光しつつある超新星が発見されました。おそらく爆発後間もなくで、今後かなり明るくなるものと期待されます。発見者は山形県山形市にお住いの板垣公一(いたがきこういち)さんで、これまでに10個以上の超新星を見つけているベテランの超新星ハンターです。

超新星の位置は、以下の通りで、母銀河であるNGC 3953渦巻銀河の中心から北に93秒角、東に62秒角にあたります。渦巻の腕の外のほうに位置しています。発見画像は、http://www.rochesterastronomy.org/sn2006/n3953s1.jpg で見ることができます。

  赤経  11時53分55.74秒
  赤緯  +52度21分09.4秒  (2000年分点)
  超新星2006bp周辺の星図

板垣さんがこの超新星に最初に気付いたのは、4月9.6136日(世界時、以下同様)、日本時間にすると9日の23時24分に撮影した画像を見たときです。そのあと、10日4時前まで観測を続けましたが、そのわずか5時間弱の間に、超新星は1等級近くも明るくなりました。このような急増光がとらえられたのは、ごく珍しいことです。報告された明るさは、次の通りです。

  9.6136日  16.7等
  9.6689日  16.4等
  9.7383日  16.0等
  9.7835日  15.8等

母銀河であるNGC 3953には、5年前に超新星2001dpも出現しています。この超新星は、超新星のなかでも明るい部類であるIa型(核爆発型)超新星で、発見された時にはすでに極大を1か月ほど過ぎていましたが、それでも、14.4等ほどの明るさでした。今回の超新星2006bpが、もしIa型であれば、極大では13等級程度、その他の型(重力崩壊型)だとしても15等程度に明るくなると期待されます。X線観測衛星SWIFTが向けられることも決まっており、今後のタイプ決定 と詳細な観測が期待されます。

(国立天文台アストロ・トピックス)

山形県山形市にお住いの板垣公一(いたがきこういち)さんは、口径60センチメートルの反射式望遠鏡にCCDを使って撮った、おおぐま座の銀河、NGC 3953の画像の中に 16.7等級の超新星を発見しました。この発見は兵庫県の中野主一(なかのしゅいち)さんを通じて国際天文学連合電報中央局に報告され、この超新星は2006bpと命名されました。

超新星の発見時刻は4月9.60日(世界時、以下同様)、明るさは16.7等ほどでしたが、その後の観測では15.8等まで急激に増光中です。新星や超新星が増光中に発見されることは少なく、物理的に大きな知見が得られることから分光観測が大いに期待されます。

この天体は NGC 3953 の中心位置から、東に約1分角、北に約1.5分角のところにあります。また、板垣さん自身が観測した3月19日、23日には、この位置には星像は写っていませんでした。

板垣さんは昨年8月、うしかい座に超新星を発見していますが(国立天文台アストロ・トピックス(135))、今回はそれに続く快挙です。これでご自身の発見(独立発見を含む)は通算17個目となります。因みに超新星の発見は、2月にかみのけ座に超新星を発見した鈴木章司(すずきしょうじ)さんに続き、板垣さんは日本人としては今年二番目となります。


4月14日更新分

超新星2006bpの位置:この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ Ver.7」で表示して位置を確認できます。ご利用の方は、ステラナビゲータを起動後、「データ更新」を行なってください。

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