4月28日の夕方、とびっきり細い新月直後の月を見よう

【2006年4月21日 アストロアーツ】

新月(朔)後に、月が夕方の西の空に見え始めるのは、いったいどのくらいの月齢からなのでしょうか。昔から新月直後(または新月直前)の細い月を見つけようという試みは、世界各国で行われていますが、なかなか困難なことが知られています。


(新月前のとびっきり細い月 (月齢2の月(1) (月齢2の月(2)

(上)【撮影日時/2005年9月3日4時59分20秒、撮影地/木曽御岳山中腹、撮影/川村 晶】(新月まで22時間40分、太陽離角10度6分の月です。肉眼でやっと、双眼鏡で楽に見えました。4月28日の夕方の月は、これよりもさらに細いはずです。写真では中央にかすかに写っています)(中)【撮影日時/2006年3月31日18時46分、撮影地/群馬県藤岡市、撮影/川村 晶】(下)【撮影日時/2006年3月31日19時00分、撮影地/群馬県藤岡市、撮影/川村 晶】。(いわゆる三日月です。4月29日の夕方の月もこのような感じで見えるでしょう。肉眼でもうっすらと月の輝いていない部分が見えます。これは太陽の光が地球で反射して月を照らしているからで、地球照と呼ばれています。)いずれも、クリックで拡大

新月から1日以上経過した月は、条件さえそろえば比較的簡単に見ることができます。ところが、新月から24時間以内、月齢1未満の月は、なかなか見ることができません。それは、月が太陽に近いことと日没後の早い時刻(もしくは新月を過ぎても日没前に)月が沈んでしまうからです。さらに、月の光っている部分がほとんどなく、輝面比が0に近いことも、細い月を見つけにくくしています。

また、月は見かけ上、天球では複雑な動きをしているので、地球上の同じ場所では、新月の日の夕方にいつも同じ条件で細い月が見られるとは限らないということも理由のひとつでしょう。

新月とは、一般的に「月が太陽と同じ方向に位置する時」と簡単に説明されていますが、月は新月の時に太陽とまったく同じ方向に位置するとはかぎりません。天球上での月の見かけの通り道である白道は、太陽の見かけの通り道である黄道とは、およそ5.2度の角度で交わっているため、新月になるときの月の位置は、見かけ上、太陽の南側であったり、北側であったりします。もしも、太陽と本当に同じ方向で新月になれば、皆既日食や金環日食が見られることになります。したがって、現在では、地心から見て、月の中心が太陽黄経と同じになった時を新月と定義しています。また、新月になる時刻も毎回変わります。

このように、月が太陽の北側にいるのか、南側にいるのか、いつ新月になったのか、さらに地平線に対しての黄道の傾きなど、いくつもの要因で、日没時での新月直後の月の地平高度や方位、月齢も毎回異なるのです。

さて、実際にさまざまな人が細い月を見ることに挑戦していますが、過去の経験から太陽離角が7.5度未満の月は、なかなか見ることができないようです。それでは、いったい、日本で新月直後の月を見るチャンスはいつなのでしょうか。今年の東京での新月直後での日没時の月齢、地平高度、太陽離角を以下に示します。

このデータを見ると、月齢1未満であるなら、3月30日がもっとも条件がよかったことになります。太陽離角は12゜16'41"、日没時の地平高度も11.311゜とかなり高かったことがわかります。しかし、この時は月齢0.9と、ほぼ月齢1に近いものでした。そこで、チャレンジという意味でおもしろいのは、限界と言われる7.5度に近い条件の4月28日の日没後になるでしょう。この日の日没時の月の太陽離角はおよそ7.4度、地平高度はおよそ6.5度、月齢0.6です。

細い月が見つけられるかどうかは、天候や空の透明度などにも左右されます。空気中に漂うチリの影響が少ないので、標高の高い山の上のほうが、有利でしょう。ぜひとも挑戦してみてください。

2006年新月直後日没時データ(東京)

日付 月齢 高度 太陽離角
1月30日 0.7 6.593゜ 10゜25'22"
2月28日 0.3 2.504゜ 4゜18'57"
3月30日 0.9 11.311゜ 12゜16'41"
4月28日 0.6 6.495゜ 7゜23'34"
5月27日 0.2 2.623゜ 4゜24'42"
6月26日 0.7 8.092゜ 9゜15'51"
7月25日 0.2 3.074゜ 3゜50'12"
8月24日 0.6 3.190゜ 6゜01'56"
9月23日 0.9 2.138゜ 9゜11'09"
10月22日 0.1 -3.567゜ 3゜48'42"
11月21日 0.4 -2.179゜ 6゜40'46"
12月21日 0.7 2.302゜ 9゜50'35"

データを見て、おもしろいのは10月22日や11月21日のように、新月を過ぎても太陽よりも早く月が沈んでしまう時があることです。また、太陽離角が大きくても日没時の地平高度がほとんどない場合は、見つけにくいといえるでしょう。反対に、太陽離角と地平高度がほぼ同じ場合がもっとも探しやすいといえます。今年は、3月30日と4月28日がこの条件に近いと言えるでしょう。

新月直前の細い月も同様に探して見るとおもしろいでしょう。ステラナビゲータ7を使ってシミュレーションすると、条件のよい日がわかると思いますので、ぜひ挑戦してみてください。

ところで、4月29日の夕方は月齢1.6で、輝面比は0.03、太陽離角は20度ほどにもなり、日没時の地平高度も20度ほどと、ずいぶん見やすくなりますが、まだまだずいぶんと細い月ですので、前日に月を見つけられなかったら、この日も夕方の西の空を見上げてみましょう。

さらに付け加えると、この4月29日の日没後、透明度が良ければ、双眼鏡や望遠鏡を使うと月と重なっているプレアデス星団M45がわかるはずです。じつは、この日の月没直前に、星団中のη(エータ)星アルキオーネが月に隠される現象が見られます。月没の遅い西日本ほど好条件です。「細い月を見ようチャレンジ」と「すばる食」のセットで、連休の初日の天文イベントを楽しんでみてはいかがでしょう。

ちなみに、月齢は、新月(朔)を0としますが、日本では古来から新月が一日月です。月齢1が二日月、月齢2が三日月です。4月29日の夕方の月は、月齢2に近いので、厳密な意味での「三日月」になります。多くの方が持つ「三日月」のイメージは、月齢3から4あたりの月の形でしょうから、ほんとの三日月は、うんと細いことがわかるでしょう。

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