元第9惑星・冥王星に、小惑星番号(134340)を付与−2003 UB313などにも
【2006年9月8日 MPEC 2006-R19】
国際天文学連合(IAU)で決定した「太陽系の惑星の定義」により「矮惑星(dwarf planet)」となった冥王星に、小惑星センター(MPC)が小惑星番号(134340)を与えた。同時に、「矮惑星」2003 UB313に(136199)、「矮惑星」の有力な候補である2003 EL61と2005 FY9にそれぞれ(136108)と(136472)が与えられた。
じゅうぶんな観測が行われ精度の良い軌道が決定した小惑星には「小惑星番号」が付けられる。その権限を持つのが、小惑星の観測結果・軌道データを管理する組織であるMPCだ。
チェコのプラハで開かれていたIAU総会で、「太陽系の惑星の定義」が決定した。自分の重力で丸くなるほどの質量を持っていて、かつ軌道周辺に自分に匹敵するサイズの天体がないものが惑星とされた一方、周囲の天体に比べてじゅうぶんに大きいとはいえない天体は「矮惑星(dwarf planet:正式な訳語は未定)」とされた。さらに、惑星・矮惑星・衛星のいずれでもない天体は、「太陽系小天体(small solar system object:正式な訳語は未定)」と定義された。
以上の決定を受け、MPCは矮惑星の取り扱いを検討していた。IAUの定義に基づけば、これまで「小惑星」として扱われていた天体は基本的にすべて「太陽系小天体」に入るはずだが、「矮惑星」と「太陽系小天体」は異なるカテゴリーである。そのため、「矮惑星」や「矮惑星」の候補に小惑星番号を付けるかどうかは難しい問題であると言える(さらに加えれば、今後「小惑星(minor planet)」という用語自体を正式には用いないこともIAU総会で決定している)。
しかし、矮惑星と認められた天体の1つ「セレス」にはすでに小惑星番号(1)がついていること、MPCの業務は狭義での小惑星に限らず彗星や衛星のデータ収集にも及んでいて、そうした小天体のデータベースを管理することこそがMPCの理念であることなどから、冥王星などに小惑星番号を与えることが決定した。
新たに番号がつけられた天体は以下のとおり。なお、すべて海王星よりも大きな平均軌道半径を持つ天体(Trans-Neptunian Object)だ。
天体名 | 小惑星番号 | 特徴 |
---|---|---|
冥王星 | (134340) | 矮惑星。1930年に発見され、これまで第9惑星とされていた |
2003 UB313 | (136199) | 矮惑星。2003年に撮影された画像から発見、2005年に「第10惑星」として発表 |
2003 EL61 | (136108) | 矮惑星候補。4時間弱周期の高速な自転から楕円形をしている |
2005 FY9 | (136472) | 矮惑星候補。2003 UB313、2003 EL61とほぼ同時に発表された大型の天体 |
MPCは、小惑星番号をつけることで「矮惑星カタログ」を新たに作る可能性が排除されることはないとしている。ただし、そのようなカタログが作られたとしても小惑星番号が取り消されることはなさそうだ。小惑星番号を付与された天体の中には、その後の観測から彗星であると判明したものがあるが、小惑星番号は付与されたままである。今のところ、小惑星番号に欠番は存在しない。
1999年に「冥王星は惑星か否か」という議論が巻き起こった際に、「小惑星番号10000番にしてはどうか」という意見があった。このときは反対意見が多く番号の付与は見送られたが、7年の歳月と共に番号を付与される小惑星の数は急激に増えていた。結局冥王星に番号をつけることになった今、皮肉なことにその番号はひじょうに中途半端なものとなってしまった。