サンタのそりには早すぎる?ESOのカメラが上空にとらえたもの
【2006年12月21日 ESO Organization News】
12月18日、チリにあるヨーロッパ南天天文台(ESO)のパラナル天文台の全天カメラにまぶしく線を描く物体がとらえられた。物体の像はその後、雲がたなびくような姿に変わってしまった。サンタクロースのそりが通った跡のようにも見えるこの物体は一体何だったのだろうか?
12月18日早朝4時、ESO・パラナル天文台の研究者は、同天文台の全天カメラMASCOTにとらえられた物体を見て驚いた。それは、約45分にわたって明るい線を描いた後、たなびく雲のような姿に変わってしまったからだ。
ESOの大型望遠鏡VLT(Very Large Telescope)に設置されているUT1のオペーレーターを務めるChristian Esparzaさんは、「確認のため外に出て、空を見上げたときは、すでに雲のようになっていました。とにかく、最初に発見したときには、大マゼラン雲くらい明るかったんです。本当に驚きました」と話している。
ESOでは、彗星の研究家も巻き込んでの真剣な追跡が開始された。流星にしてはその動きはかなり遅く、国際宇宙ステーションやその他の人工衛星がこの時刻に天文台の上空を通過することはない。万が一それらの天体であったとしても、なぜ明るい物体が雲に姿を変えたのか。
そこで、ボランティアが撮影した画像から全天地図を作成し、公開しているNight Sky Liveのホームページで確認したところ、同じ現象がパラナルから南へ600キロメートルも離れた場所でも起きていることが判明した。
早速この物体までの距離を計算したところ、最初の発見段階で上空6000キロメートルだったものが、その後驚くほどのスピードで倍の高さにまで上昇していることがわかった。この距離から唯一考えられるのは、もうロケットしかないという結論に至り、それが同じ日の朝に打ち上げられた日本のH-IIAロケットだったことがわかるまでに時間はかからなかった。
パラナル天文台で前日から観測を行っていた研究員たちは、その後安心して眠りについたというが、サンタのそりの跡を思わせるかのようなお騒がせ物体は、その場に居合わせた天文台スタッフに、一足早い驚きと笑いのクリスマス・プレゼントとなったのかもしれない。