ハッブル宇宙望遠鏡の最新鋭カメラが停止、復旧は困難か

【2007年1月30日 NASA News Release ほか】

NASAは、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の撮像装置「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」が電気系統の異常によって停止したと発表した。現在、原因の究明と対策の検討が進められているが、当面の間は最高性能を誇るACS以外の撮像装置を使った観測を余儀なくされそうだ。


(HSTの断面図とACSの位置)

HSTの断面図とACSの位置。クリックで拡大(提供: NASA and STScI)

HSTは1月27日午前(米東部標準時間)に緊急停止状態に入った。直後の調査によれば、回路のショートによりACSへ電源が供給できなくなったもようだ。緊急停止状態は今週中にも解除されるが、ACSは当分の間運用を停止する。

まだHSTには「広視野/惑星カメラ2(WFPC2)」などの観測装置が残されていて、ACSで予定されていた観測を代行することになりそうだ。しかし2002年3月に取り付けられ、もっとも高い解像度と広い視野を誇るACSが使えないのは多くの研究者にとって痛手と言えるだろう。2月9日から始まる観測サイクルでは、研究者から提出された750件の観測計画のうち500件がACSを使うものだった。

ACSは、最低でも5年間は運用可能とされてきた。しかし、2006年6月に電源供給装置が異常を起こし、予備の供給装置へ切り替えたばかりである。復旧には、再び元の供給装置へ切り替えるか、宇宙飛行士が直接赴いて修理するしかない。前者の方法がとれない場合、2008年5月以降に予定されている次回のHST改修ミッションを待つしかない。

しかし、2008年の改修では新たな装置が搭載される。スケジュールの制約からACSを修理する時間が割けるのかという問題があるし、装置の追加によってそもそもACSの穴を埋めることができてしまうのではという見方もある。一方、今回の異常がHSTの電源系統全体に関わっている可能性もあり、予断を許さない情勢だ。

原因を究明するために結成された審査委員会は、3月2日までに結論を下して対策を提言するとのことである。