「脱皮」する渦巻銀河、ハッブル宇宙望遠鏡が発見
【2007年3月15日 Hubble newscenter】
銀河団の強力な重力でちぎられている銀河が、NASAのハッブル宇宙望遠鏡(HST)の画像から見つかった。これは、星間ガスに富む渦巻銀河が、ガスの少ない楕円銀河などへと進化する過程かもしれない。
おおざっぱに言って、現在の宇宙に存在する銀河の半分は楕円銀河である。材料となるガスが乏しいので、楕円銀河における星形成はあまり活発ではない。もう半分は渦巻銀河や不規則銀河で、星間ガスの中から次々と星が誕生している。だが観測によれば、宇宙年齢が現在の半分と若かったころ、楕円銀河は2割しか存在しなかったという。銀河はどうやって楕円銀河へ進化していったのか。変化は何十億年という時間をかけて起こるので、観測から確かめるのは難しい。
手がかりとなりそうな銀河が、2001年にHSTが撮影した画像の中に見つかった。場所は、銀河団Abell 2667のまっただ中だ。
Abell 2667には目に見える銀河だけでなく、超高温ガスやダークマターが集まっていて、強力な重力で奥の銀河から届く光をゆがめている。中央右寄りに見えている弧状の天体はその一例だが、もちろん実際の銀河がゆがんでいるわけではない。しかし、左上の銀河だけは別だ。中心部には渦巻が見られるが、左下に尾のようなものが伸びている。この銀河はAbell 2667の中を時速350万キロメートルという高速で動いており、銀河団の重力で物理的にひきちぎられている。
銀河の中央では爆発的な星形成が引き起こされてる一方で、多くの若い星々がガスと共に後ろへ取り残されている。これこそ、渦巻銀河が不活性な銀河へと進化している瞬間だ。ただし、研究者によれば「脱皮」に要する時間は10億年で、今見ているのは2億年が経過した状態に過ぎないということである。