太陽観測衛星「ひので」が観測した皆既日食のムービー公開

【2007年3月22日 国立天文台 アストロ・トピックス(284)

3月19日に日本の一部でも見られた部分日食は、地球上では決して皆既日食とならなかった。だが、軌道上の太陽観測衛星「ひので」は月が太陽を完全に隠すようすをとらえていた。


アストロ・トピックスより

(軌道上の部分日食)

「ひので」のX線望遠鏡が軌道上で撮影した部分日食。クリックで拡大(提供:国立天文台)

(軌道上の皆既日食)

「ひので」のX線望遠鏡が軌道上で撮影した皆既日食。国立天文台「ひので」ページでは動画も公開している。クリックで拡大(提供:国立天文台)

2007年3月19日に日本国内の一部で、ごくわずかに欠ける部分日食が観測されました。特に西日本では天候にも恵まれ、部分日食が各地で観測されています。ただ、今回の日食では地上で皆既になる地域はありませんでした。皆既日食を引き起こす月の影(本影)が、地球をそれてしまっていたからです。そのため、今回の日食が見えた地域でも、部分日食にしかなりませんでした。ところが、地上680キロメートルを周回する太陽観測衛星「ひので」では違いました。その軌道上で、月の影(本影)が通過し、衛星からは皆既日食となったのです。

太陽観測衛星「ひので」は、日本時間2007年3月19日11時55分(世界時2時55分)に、その軌道上で起きた皆既日食を観測することに成功しました。今回公開された画像と動画は、太陽全面を観測できるX線望遠鏡と可視光・磁場望遠鏡によって撮影されたものです。天文学的な研究を行う上でも、この日食は価値のある現象です。日食中の観測データを解析することで、観測機器に対する散乱光の影響の度合いを調べたり、画像の解像度の評価を行ったりすることができるからです。こういった解析は今後行われる予定ですが、SOLAR-B推進室では、太陽に関する研究や天文学の広報・普及活動の一環として、ホームページで画像と動画を一般に公開することにしました。

特に動画を見ると、真っ黒な月が太陽の前面を通り過ぎていく様子がわかります。ダイナミックな天体の動きを感じることができるでしょう。太陽観測衛星「ひので」によって観測された同様の画像や動画は、今後も順次公開されていく予定で、世界中から大きな期待が寄せられています。