60光年離れた惑星の世界地図
【2007年5月11日 CfA Press Release】
太陽系の外に存在する惑星はもはや珍しくなく、たびたび発見が報じられているが、そこで描かれる惑星の姿は、すべて想像図だ。現在の技術ではそもそも惑星を単一の天体として撮影することすらできない。しかし今回紹介するのは、観測データの処理を工夫することで描かれた、正真正銘の「系外惑星の世界地図」だ。
こぎつね座の方向約60光年の距離にある系外惑星HD 189733bは、太陽系の木星よりわずかに大きなガス天体で、恒星から至近距離のところを2.2日で回っている。地球から見ると1周ごとに恒星の前を横切り、そのため恒星が2.2日周期で暗くなることから発見された。
ハーバード大学の大学院生Heather Knusron氏らの研究チームは、NASAの赤外線天文衛星スピッツァーを使って、HD 189733bを詳しく調べた。系外惑星が確実に親星から切り離されて撮影された例はないが、恒星の光の性質がわかってさえいれば、差し引くことは可能だ。研究チームは合計33時間の観測で25万を超えるデータを取得し、HD 189733bのあらゆる面からの光をとらえた。すべてのデータをつなぎ合わせることで得られたのが、史上初の「系外惑星の地図」である。正確に言えば、HD 189733bの表面が加熱されることで発する赤外線をとらえているので、表面全体の温度分布だ。
「初めて、まったくの別世界をつぶさに見ることができました。望遠鏡を通して木星を観察したガリレオも、こんな気分だったのかもしれませんね」とKnusron氏はコメントした。
木星といえば直径が地球の2, 3倍もある大赤斑が有名だが、HD 189733bにはさらに巨大な斑点があるようだ。そこは温度が周りと比べて数百度高い「ホットスポット」である。興味深いのは、ホットスポットの位置だ。HD 189733bのように恒星のすぐ近くを回る惑星は、地球に対する月のように、常に恒星に同じ面を向けていると考えられる。従って、恒星に対して真正面の位置がもっとも熱いはずだが、ホットスポットはそこから30度ほど「東」にずれていた。どうやらHD 189733bでは猛烈な風が吹いていて、熱を運んでいるようだ。
ステラナビゲータVer.8で系外惑星の位置を表示
ステラナビゲータVer.8では、HD 189733bが存在する恒星、HD 189733を星図に表示させることができます。惑星の存在が確認された200個にのぼる恒星は、追加天体として「コンテンツ・ライブラリ」で公開しています。ステラナビゲータ Ver.8をご利用の方は、ステラナビゲータの「コンテンツ・ライブラリ」からファイルをダウンロードしてください。ただし、惑星表面の地図は描けません。