4D2Uプロジェクト制作の映像作品がシーグラフに入選

【2007年7月30日 国立天文台 アストロ・トピックス(315)

このたび、国立天文台4次元デジタル宇宙(4D2U)プロジェクト制作の映像作品「渦巻銀河の形成」(英文タイトル「The Formation of a Spiral Galaxy」)が、世界最大のコンピュータ・グラフィックス(以下CG)映像の祭典であるシーグラフ(SIGGRAPH)において、エレクトロニック・シアター上映作品に選出されました。

本作品は、渦巻銀河の形成過程を再現した大規模なコンピュータ・シミュレーションを可視化したもので、総計1000本に近い応募作品から選ばれた34作品の一つとして、今年8月上旬に米国サンディエゴで行われる「シーグラフ2007」会場で上映される予定です。

シーグラフはアメリカ計算機学会の分科会の一つであり、CG分野における最高峰の学会・展示会として、既に30年以上の歴史をもっています。中でも今回「渦巻銀河の形成」が入選したエレクトロニック・シアターは、シーグラフを象徴するイベントの一つとして知られ、世界中からその年を代表するCG作品を選出して、映画館等の大きなスクリーンで連続上映するものです。シーグラフに集まる数万人のCG関係者のみならず、映像業界全体からの注目度も高く、入選はひじょうに名誉なこととされています。

渦巻銀河形成のシミュレーション・データを提供した、国立天文台天文シミュレーションプロジェクト研究員の斉藤貴之(さいとうたかゆき)さんは、今回映像化された計算について次のようなコメントを寄せています。「現在有力視されている宇宙モデルの中では、小さな構造が初期に形成され、それらが合体して現在我々が知る銀河が形成されてきたと考えられています。このシミュレーションは、そのような銀河の形成過程を200万個の粒子で表現し、国立天文台の重力多体問題専用計算機 GRAPE-5 システムを用いて約1年の時間をかけて行われたものです。シミュレーションによって描き出されたダイナミックで美しい銀河の誕生の様子を、多くの人に楽しんでもらえたらと思います」

通常のCGソフトでは処理することができない、膨大な計算データを可視化するにあたっては、4D2Uプロジェクトで開発された、数百万体の粒子を任意の視点で表示する機能をもつ「Zindaiji」(ジンダイジ)というソフトが活躍しました。本作品の入選は、最先端のサイエンスと、それを可視化するための技術開発、美しい映像作品に仕上げるための芸術的感性とが、プロジェクトにおいて結びついた成果といえます。

「渦巻銀河の形成」の映像は、本年3月に国立天文台三鷹キャンパスに完成した「4D2Uドームシアター」の月例公開において、ドーム立体映像としてご覧いただくことができます。また、今回シーグラフに入選した、英語ナレーションと音楽のついたバージョンに関しても、4D2Uプロジェクトのウェブサイト上でのストリーミング配信を予定しています。

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