土星の衛星タイタンで、メタンの霧雨と南極の湖を発見
【2007年10月19日 W. M. Keck Observatory/NASA JPL News Releases】
土星の衛星タイタンを地上から近赤外線で観測し、「ザナドゥー」と呼ばれる領域で、メタンの霧雨を降らすと考えられる雲の存在が初めて明らかとなった。また、土星探査機カッシーニによる観測では、北極に続き南極にも湖が発見された。
タイタンに降るメタンの霧雨
土星の衛星タイタンは、水星よりも大きく、太陽系のなかでは唯一厚い大気に覆われた衛星だ。その成分のほとんどは窒素であり、地球の大気とよく似ている。
カリフォルニア大学バークレー校の研究チームは、米国ハワイにあるケック望遠鏡と南米チリにあるヨーロッパ南天天文台(ESO)の巨大望遠鏡(VLT)干渉計を使って、タイタンを近赤外線で観測した。そして、タイタンの「ザナドゥー」と呼ばれる領域で、朝に限ってメタンの霧雨が降り注いでいる証拠が得られた。
研究チームは、タイタンの地表で反射される光から雲で反射される光を引くことで、衛星全体を覆う雲のようすを描き出すことに成功した。そこから浮かび上がったのは、高度30キロメートルにすじ状に広がる凍った(固体の)メタンの雲、そして、高度20キロメートル以下に存在する液体のメタンの雲だ。この液体のメタンの雲からは、雨が降り注いでいるらしい。
地球では、湿気を含んだ雲が山のような斜面に風で押されることで沿岸に雨を降らすが、タイタンでも、同じようなプロセスで霧雨が降っていると考えられている。
タイタンの南極にも、湖を発見
NASAとヨーロッパ宇宙機関(ESA)の土星探査機カッシーニによってとらえられた、タイタンの北極にある湖の最新画像が公開された。
公開されたのは、カッシーニによるレーダー観測の結果から作られたモザイク画像で、タイタンの北極に存在する多くの湖や海が見られる。そのうちの1つは、米国のスペリオール湖(8.2万平方キロメートル)よりも大きいことがわかっている。
カッシーニは、緯度が60度以上の北極領域について、約60パーセントの観測を終えている。そのうち14パーセントの面積を占めているのは、液体の炭化水素の湖と考えられている。
また、10月2日に行われたフライバイでは、初めて南極にも湖が見つかった。今後、北極と南極とでどのような違いがあるのかが調べられることになっている。
カッシーニ計画にたずさわるレーダー科学者Rosaly Lopes氏らは、タイタンにおける湖の形成について、火山活動や侵食によってつくられたと考えている。
今までにタイタンの両方の極に発見された湖の大きさは、1平方キロメートルほどのものから10万平方キロメートルほどとさまざまだ。観測された400個の湖のうち70パーセントは、2万6千平方キロメートルを超える大きな「海」であることもわかっている。
タイタン
生命が存在しているかもしれない衛星ということでは土星のタイタンにも注目が集まっている。半径は2575キロメートルと衛星としては木星の衛星ガニメデに次ぐ太陽系2番目の大きさ。冥王星、水星よりも大きいことで知られているが、注目されているのは大きいからではなく、太陽系にある衛星の中で唯一、濃い大気を持っているからだ。大気の濃さは地球の1.5倍にも達する。主成分は窒素で97%、メタンが2%含まれている。(「150のQ&Aで解き明かす 宇宙のなぞ研究室」Q.71 土星の衛星タイタンの大気って地球より濃い? より一部抜粋 [実際の紙面をご覧になれます])