約30年後のこと座流星群の突発出現が予報された

【2008年4月7日 日本流星研究会】

毎年4月22日頃にピークを迎える「こと座流星群」は、予期せずたくさんの流星が現れたことがある流星群だ。最近の研究によると、ダスト・トレイルの計算で過去の突発出現をほぼ説明できるという。次回の突発出現が期待できるのは2040〜2041年であるという予報が発表された。


(こと座流星群の中心となる放射点を示した星図)

こと座流星群の中心となる放射点。ヘルクレス座にある。クリックで広範囲を表示

(1回帰のダスト・トレイルと地球の位置関係)

1回帰(1472年放出)のダスト・トレイルと地球の位置関係を表すグラフ。横軸の目盛は10年おきで各年の4月を示す。縦軸Rは降交点の太陽からの距離(天文単位)。ダスト・トレイルの位置を示す青い曲線が、ピンクの線(地球の位置)と交わると突発出現が起こる。赤の矢印(↓)はこの計算と関連した突発出現が観測された年。クリックで拡大(提供:佐藤幹哉さん)

4月15〜25日頃に出現する、こと座流星群(こと座κ流星群)は、通常はピーク時に1時間あたり10個程度の流星が見られる中規模の流星群として知られている。ところが過去には突発的にたくさんの流星が見られた記録があり、流星観測者は毎年関心をもって監視している。突発出現の年には1分間に数個以上の流星が見られることもあり、比較的最近では1982年にアメリカでHR(1時間当たりの流星数)= 70〜100個程度の出現があった。

こと座流星群の突発出現は、しし座流星群などの予報で成功しているダスト・トレイルの理論で説明できることがライチネン(Esko Lyytinen)さんらによる研究で示されている。日本流星研究会の佐藤幹哉さんは、自ら行った計算によってそのことを確認した。

佐藤さんの計算ではまず、こと座流星群の母天体とされる周期約400年のサッチャー彗星(C/1861 G1 Thatcher)が太陽にもっとも近づいた1472年に、流星のもととなるダストが彗星核から放出されたとした。各惑星の重力の影響による微妙な変動を追跡し、1公転したダストの群れ(1回帰ダスト・トレイル)が、毎年地球とどこまで接近するのかを、過去200年以上にわたって詳しく検討した。その結果、1回帰ダスト・トレイルが地球軌道と交差した年は、過去に突発出現が記録されている年と一致しており、1803年、1863年、1922年、1982年の突発出現は1回帰ダスト・トレイルの計算結果で説明がつくという。

これには約59年の周期性があり、木星と土星の位置が大きく影響しているようだ。また、次回は2040〜2041年に期待できるとしているが、そのとき日本からは観測不可能で、流星は暗いと予想されている。

1945年4月22日未明には、日本の流星研究の先駆者である小槇孝二郎さんがHR = 92を観測したという記録がある。この突発出現は、1回帰ダスト・トレイルでは説明することができない。こと座流星群の過去の記録には、ほかにもいくつか説明できない突発出現の年がある。木星との共鳴でダストの濃い部分が生じるなど、まだ詳しく解明されていないメカニズムがあると佐藤さんは指摘している。

こと座流星群は、数は少ないながらも毎年確実に出現している。2回帰以降のダスト・トレイルは拡散しており、地球は毎年その中を通過しているのだ。通常のピークは4月22日。2008年は日本では昼間にあたり、夜は満月に近い月があって観測条件は悪いが、いつ未解明の突発出現があるかは現時点ではわからない。月明かりをなるべく避けて流れ星を数えてみよう。

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