重力波を証明か、ブラックホールの連星系

【2008年4月24日 Calar Alto Observatory

ある銀河の中心に位置する太陽180億個分の質量を持つ巨大ブラックホールのまわりを、小さなブラックホールが回っているとする研究結果が発表された。小さなブラックホールの軌道は変化していて、一般相対性理論が予言する「重力波」の存在が証明できるという。


(OJ287とそのまわりを回るブラックホールの想像図)

OJ287とそのまわりを回るブラックホールの想像図。円盤の中心がOJ287で、小さなブラックホールがガス円盤に突っ込む際に急激な明るさの変化が起きる。クリックで拡大(提供:Calar Alto Observatoryのリリースページより)

かに座の方向約35億光年の距離にある銀河の中心には、OJ287と呼ばれる巨大なブラックホールが存在している。

OJ287は、ガスの円盤に取り巻かれているとみられ、円盤の輝きが観測できるのだが、その明るさは約12年の周期で変化することが知られている。フィンランド・トゥルク大学のMauri Valtonen博士が率いた研究グループは、この明るさの変化は、小さなブラックホールが引き起こしていると発表した。

それによれば、小さなブラックホールは、約12年の周期でOJ287の周りを回るごとに、ガスの円盤を2回突き抜けている(図参照)。小さなブラックホールの軌道から、OJ287の質量が太陽の約180億倍であると求められた。

さらに、小さなブラックホールの軌道は、じょじょに縮んでいるという。研究グループでは、この軌道の変化は、一般相対性理論が予測する重力場の変化によるものであると発表した。

一般相対性理論では、重力の正体は空間のゆがみであるとされている。そのため、質量の分布が時間とともに変化すると、空間のゆがみも変化し、その変化が光と同じ速さで重力の波として伝わるとされている。

小さなブラックホールの軌道が縮んでいるということは、膨大なエネルギーが重力波(重力場の変化)として放出され、エネルギーが奪われているとしか説明できないようだ。

一般相対性理論で扱うような、ひじょうに強い重力がはたらくケースは、そう多くはない。OJ287の次のバーストは、2016年と予測されている。その際には、重力波を検証する貴重な一例に数多くの望遠鏡が向けられることだろう。