2つの銀河団をつなぐ高温のガスを発見

【2008年5月13日ESA

ESAのX線観測衛星XMM-Newtonによる観測で、2つの銀河団をつなぐ高温のガスの存在が明らかとなった。


(銀河団Abell 222とAbell 223の画像)

銀河団Abell 222とAbell 223のX線と可視光観測による合成画像。クリックで拡大(提供:ESA/ XMM-Newton/ EPIC/ ESO (J. Dietrich)/ SRON (N. Werner)/ MPE (A. Finoguenov))

網の目構造のモデル)

網の目構造のモデル。クリックで拡大(提供:Springel et al., Virgo Consortium)

陽子や中性子などの身近な物質(バリオン)は、宇宙全体のたった5パーセントしか占めていないと考えられている。宇宙はそれ以外に、23パーセントのダークマター、72パーセントのダークエネルギーによって構成されていると考えられている。

たった5パーセントしかないバリオンのうち、星や銀河やガスなどの物質として存在が確認されているのは約半分しかない。星や銀河などは、網の目状の構造(解説参照)をつくって分布していることが観測されている。

10年前に、未確認のバリオンに関する予測が発表された。それによれば、バリオンは銀河団と銀河団の間にある巨大な空間に、密度の低いガスとして広がっているという。ガスは高温で、エネルギーの低いX線を放射していると考えられ、その後数多くの観測が行われたが、検出は簡単なことではなかった。

しかし、オランダ宇宙研究機関(SRON)のNorbert Werner氏が率いた国際的な研究チームがXMM-Newtonを使い、そのガスの一部と思われる高温のガスを検出した。

観測されたのは、地球から約23億光年の距離にある2つの銀河団Abell 222とAbell 223。銀河団の画像とスペクトルの分析結果から、2つの銀河団をまるで橋のようにつなぐ、高温のガスが明らかになったのである。

ただし、今回XMM-Newtonが高温のガスをとらえることに成功した理由は、橋のような構造が視線方向に沿っていたために、放射が重なったことにある。Werner氏は「これは、始まりに過ぎません。網の目状に分布する物質を理解するためには、もっと多くの観測例が必要です。究極的には、宇宙望遠鏡を打ち上げて、現在存在する望遠鏡をはるかに超える感度で観測する必要があります」と話している。

宇宙はどんな構造?

宇宙は、膨大な数の銀河が平面状に集まって「壁」にように分布している領域と、銀河がほとんどない領域に分かれていることがわかっている。銀河が集まった領域と空洞の領域がつくる網の目の構造が宇宙には連続して広がっていると考えられており、「宇宙の泡構造」または、「宇宙の大規模構造」と呼ばれている。(「150のQ&Aで解き明かす 宇宙のなぞ研究室」Q.134 宇宙はどんな構造? より一部抜粋)

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