世界初、彗星から来た新種の鉱物を発見
【2008年6月18日 NASA】
NASAの中村圭子さんらの研究グループが、成層圏で捕獲した彗星起源のダスト粒子の中に、ブラウンリーアイトという新種の鉱物を発見した。太陽系に存在するとは予測されていなかった鉱物であり、注目される発見だ。
NASAジョンソン宇宙センターの研究員・中村圭子さんが率いる研究チームは、地球外からやってきて大気中を浮遊し成層圏で捕獲された惑星間塵(interplanetary dust particle, 以下IDP)と呼ばれる小さなダスト粒子の中に、これまで知られていなかった鉱物を発見した。この新種の鉱物の名称はIDPの研究者Donald E. Brownleeさんにちなんで「ブラウンリーアイト(Brownleeite)」と命名され、国際鉱物学連合(IMA)でも鉱物として正式に認定された。
中村さんは、高度20000m付近で2003年4月に捕獲されたあるIDPを顕微鏡で観察し、既知の鉱物に取り囲まれた未知の鉱物を確認した。未知の鉱物はわずか数百nm(ナノメートル=100万分の1メートル)という小さな粒状だったが、組成や結晶構造が詳しく解析され、マンガンとケイ素を主成分とする新種の鉱物であることが判明した。ブラウンリーアイトは天然には地球に存在せず、太陽系に存在するとは予測されていない鉱物だった。
IDPは毎年総計で約40000tが地球に降り注いでおり、彗星起源のものと小惑星起源のものに分類される。NASAは航空機を用いて成層圏で多数のIDPを回収しているが、ブラウンリーアイトが発見されたIDPは地球がグリグ・シェレルプ彗星(26P/Grigg-Skjellerup)の軌道を交差する時期を狙って捕獲されたもので、IDPは彗星核から放出されたものと考えられている。グリグ・シェレルプ彗星は毎年4月23日頃にピークを迎え南半球で見られる「とも座流星群」の母天体としても知られているが、この時期には流星だけでなく彗星起源のIDPの捕獲量も増加する。
彗星に由来する未知の鉱物が確認されたのは世界初。彗星核には太陽系外の物質が取り込まれている可能性があり、ブラウンリーアイトはその証拠になる鉱物かもしれない。小さなダスト粒子の中の点のような鉱物であるが、研究が進めば形成時期や形成条件をひも解く手がかりも得られるだろう。太陽系の原材料や形成過程を解き明かす上で貴重なサンプルであることは間違いない。