すばる望遠鏡に新しい観測の眼
【2008年11月26日 すばる望遠鏡】
すばる望遠鏡に新しい高感度CCDが取り付けられ、感度・観測効率が飛躍的に向上した。今後、ダークエネルギーや遠方宇宙の研究で大きな貢献をすると期待されている。
すばる望遠鏡は、「高い結像性能」と「広い視野」という特徴を生かし、これまでさまざまな成果をあげてきた。その成果を支えてきた観測装置のひとつが主焦点広視野カメラ(Suprime-Cam)である。
ここ数年の間に他国の望遠鏡がすばる望遠鏡と同じ性能を持つようになってきたことを背景に、Suprime-Camの性能の向上が望まれるようになった。そこで、国立天文台、京都大学、大阪大学、浜松ホトニクスが共同で、新タイプのCCDを開発した。
完成した新CCDは、2008年7月にすばる望遠鏡に取り付けられた。試験観測の結果から、感度が期待どおり向上したこと、データの読み出し時間が従来の3分の1に短縮されたことが確認された。
なかでも、波長1000nm(ナノメートル)の赤外線では、これまでの2倍の感度を達成した。この波長付近での観測は、宇宙で最初にできた天体の発見をはじめとする遠方宇宙の研究や、なぞの多いダークエネルギーの研究など、天文学の最先端分野に大きく貢献することが期待されている。
また、新CCDは可視光から近赤外線の波長域だけでなく、X線にも高い感度を持ち、すでに次期X線天文衛星への搭載が決定している。
さらに、天文学の研究だけでなく、さまざまな分野における応用が期待されている。たとえば、医療の現場では診断に用いられるCT(コンピュータ断層撮影)で、CCDの感度が高ければ、放射線の照射量を少なくでき、人体への影響を小さくすることが可能となる。