矮小銀河を守る? 暗黒物質の見えざる盾
【2009年3月19日 HubbleSite】
銀河がばらばらに引き裂かれてしまうほど強力な重力が働く、銀河団の中心。そんな環境にありながら無傷なままの矮小銀河が、次々と見つかっている。その理由は、通常の銀河よりも丈夫な「透明パック」に包まれているからかもしれない。
宇宙を満たす質量の大部分は、望遠鏡で直接観測することができない暗黒物質(ダークマター)だと考えられている。一般に暗黒物質の存在は、直接観測可能な天体の位置や動きを調べ、天体が受けている重力から間接的に推定されるものだが、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)による観測で、新しい方法が見いだされた。
HSTは、2億5000万光年の距離にあるペルセウス座銀河団を観測して、29個の矮小銀河(矮小楕円銀河)をとらえた。そのうち17個は今回の観測で初めて見つかったものだ。
矮小銀河の周辺環境は過酷だ。そこには多数の銀河が集まり、お互いにおよぼす重力で引き裂かれたり、ゆがめられたりしている。一方、HSTがとらえた矮小銀河の多くは、丸くなめらかな形を留めていて、まるでほかの銀河から影響を受けていないかのようだ。
「これらの矮小銀河はたいへん古い年代のものであり、長らく銀河団の中にあったことでしょう。銀河を崩す要因があったなら、とっくに作用しているはずです。暗黒物質の占める割合が極端に大きな銀河に違いありません」と語るのは、英・ノッティンガム大学の研究者 Christoper Conselice氏。
Conselice氏らは、矮小銀河が自分たちよりも大きな銀河から受ける重力に耐え、形状を維持するために必要な最低限の質量を計算した。それは、矮小銀河の「見た目」よりもはるかに大きい。見た目が大きな渦巻銀河が破壊される中で無傷な矮小銀河は、透明だが分厚い暗黒物質のクッションに包まれていると言える。その質量は、われわれの天の川銀河に含まれる暗黒物質をも上回るのではないか、とConselice氏は指摘している。