火星に春のきざしをとらえた
【2009年3月31日 UA News】
NASAの火星探査機マーズ・リコナサンス・オービター(MRO)が、火星の南極に春が訪れたことを示す地表の変化をとらえた。ただし、地球の春とはずいぶん異なる風景だ。
MROの高解像度カメラHiRISEが今年2月にとらえた、火星の南極の画像が公開された。地球同様に自転軸が傾いている火星では、季節変動が起きることが知られている。それが一番はっきりわかるのが、極冠が広がったり消えたりする北極と南極なのだ。
火星の極冠の正体は固体の二酸化炭素、つまりドライアイスだ。地球なら春とともに雪や氷は溶けて流れ出すが、火星の場合、固体がいきなり気体になる(昇華)。二酸化炭素ガスは比較的氷のもろい(またはひびの入った)場所から噴き出し、地球では考えられないような「春の風物詩」を見せてくれる。
昇華した二酸化炭素は、ちりを巻き込んでそれを地上にばらまくことになる。1枚目の画像では、そうしたちりによる、暗い扇型の模様が氷の上に広がっている。
2枚目の画像では、ちりが地面に広がる前に風で吹き飛ばされたらしい。ちりがすべて同じ方向に飛ばされているのは、この範囲ではガスがいたるところで同時に噴き出したことを物語っている。研究者は、春が訪れた火星のある地域で一斉にガスが噴き出し、しばらくしてから別の地域で一斉に噴き出し…という光景を思い描いている。