ベテルギウスの質量放出の謎にせまる

【2009年8月5日 ESO

ヨーロッパ南天天文台(ESO)の大型望遠鏡(VLT)による観測で、2つのチームがオリオン座のベテルギウスの詳細な姿をとらえた。表面からガスを激しく噴き出し、太陽系とほぼ同サイズまでガスを広げながら迫りくる最期を待つ赤色超巨星の様子が初めて明らかになった。


(ベテルギウスから流れ出るガスのイメージ図)

ベテルギウスから流れ出るガス(イメージ図)。左右のスケールは、左がベテルギウスの半径、右が太陽系の惑星および天文単位(1天文単位は地球から太陽までの距離)を基準としている。クリックで拡大(提供:ESO/L. Calçada)

(VLTによるベテルギウスの高精細画像)

VLTのNACOがとらえた高精細なベテルギウスの姿。クリックで拡大(提供:ESO and P. Kervella)

全天の中でも極めて巨大な星として知られるオリオン座のベテルギウス。その規模ゆえに寿命が数百万年しかなく、近い将来起こるであろう超新星爆発の時には、昼間の地上からでもはっきり見えると予測されている。

このような超巨星が激しく物質を放出するしくみについて、このたび2つのチームがヨーロッパ南天天文台(ESO)の大型望遠鏡(VLT)を駆使し、その秘密にせまった。

パリ天文台のPierre Kervella氏のチームは、VLTの補償光学装置NACOで、「ラッキー・イメージング」(連写した中からシャープな画像を選び取る撮影法)を行い、37ミリ秒角という超高角分解能でベテルギウスを撮影した。これは、国際宇宙ステーション(ISS)にあるテニスボールを地上から認識できるレベルだ。

1枚目の図のように、ベテルギウスの表面から宇宙空間へとガスが広く流出していることがわかる。これは実に太陽から海王星までにも及ぶ距離だ。また、2枚目の図では、物質の放出の方向が偏っている様子がうかがえる。自転による極方向からの物質放出か?あるいはベテルギウス内部での激しいガスの噴出によるものだろうか?

その答えをもたらしたのは、ドイツのマックス・プランク電波天文学研究所の大仲圭一氏のチームだ。VLTと1.8m補助望遠鏡を組み合わせ、観測装置AMBERを使って、上述のNACOによるものの4倍(今度はISSのビー玉を認識できるレベル)の高角分解能での撮影に成功した。

「今回AMBERがとらえたベテルギウスは今まででもっとも鮮明なもので、表面の個所ごとにガスの動きの違いがわかるというのは、太陽以外の恒星では初めてのことです」(大仲氏)

これにより、ベテルギウスを取り巻くガスが上下に激しく流動し、星自身に匹敵するサイズの泡を生じている様子が確認された。このガスが、宇宙空間への膨大な噴出を引き起こすものと考えられる。