「限界」以上に輝いた超新星
【2009年9月16日 東京大学/広島大学】
東京大学・広島大学などの研究チームは、今年4月に発見された超新星2009dcの実際の明るさが、太陽の約80億倍だったことを突きとめた。これは「Ia型超新星」に分類されるものとしては異例の明るさで、「限界」を超えた天体が関係している。
Ia型超新星とは、連星系を構成する白色矮星に相手の恒星から物質が降り積もり、質量が限界に達すると起きる大爆発現象だ。白色矮星が自分の重さを支えられる質量の上限は太陽の1.4倍で、これはチャンドラセカールの限界質量と呼ばれている。これはすべての白色矮星に当てはまるはずなので、すべてのIa型超新星は同じ物理条件で発生し、明るさは一律に太陽の約30億倍とされていた。
東京大学・広島大学などの研究者からなるチームは、2009年4月に銀河UGC 10064で発見された超新星2009dcを、国内の複数の望遠鏡で観測した。
その結果、この超新星の明るさは太陽の80億倍で、Ia型超新星としては観測史上最大であることがわかった。この明るさを放つには、元の白色矮星の質量が太陽の約1.6倍、すなわちチャンドラセカールの限界質量を超える必要があることが示された。
明るいIa型超新星爆発については、白色矮星の質量ではなく、爆発の広がる方向に極端な偏りがあることに理由を求める説もある。そこで研究チームは、すばる望遠鏡で超新星2009dcから届く光の波を測定した。光源がゆがんでいる、つまり超新星爆発が特定の方向に広がっている場合、それに応じて波が振動する方向は縦横のいずれかに偏る。しかし、光の偏りは0.3パーセント以下とひじょうに小さく、超新星2009dcの爆発は丸かったことが確認された。
爆発を引き起こした白色矮星は、確かにチャンドラセカールの限界質量を超えていた。理論上、白色矮星が高速で回転している場合にあり得ることだ。これまでIa型超新星は、明るさが一定であることを前提に、遠方天体までの距離を測定するために使われてきた。その数値は宇宙論などでも活用されている。
超新星2009dcは、白色矮星のメカニズムのみならず、天文学のさまざまな分野に再検証の必要があることを示す警告灯と言えるだろう。
※この研究成果は、日本天文学会秋季年会(9月14日から16日)で発表された。