銀河から伸びる尾は、銀河の腕だった?

【2010年2月2日 CHANDRA Photo Album

NASAのX線観測衛星チャンドラが、銀河から伸びる2本の尾をとらえた。これまでは1本しか見つかっていなかった。尾の正体は、銀河から引き剥がされたガスで、もともとは銀河の腕だったのではないかと考えられている。


(ESO 137-001から伸びるガスの尾の画像)

ESO 137-001から伸びるガスの尾の画像。クリックで拡大(提供:X-ray: NASA/CXC/UVa/M. Sun, et al; H-alpha/Optical: SOAR (UVa/NOAO/UNC/CNPq-Brazil)/M.Sun et al.)

チャンドラがとらえた銀河団Abell 3627の画像に、銀河ESO 137-001から20万光年もの長さに伸びる2つの尾がとらえられた。2つのうち、明るい方は以前の観測でその存在が知られていたが、2つ目の尾(画像中かすかな方)が観測されることは、研究者もまったく予想外だったという。

銀河団は、重力で結びついた数百から数千個の銀河の集まりで、高温のガスに包まれている。銀河ESO 137-001は、みなみのさんかく座の方向2億光年の距離に存在する銀河で、銀河団Abell 3627の中心に向かって落ち込んでいる。それに伴い、銀河の冷たいガス(絶対温度約10度)が引き剥がされ、銀河団の超高温のガス(約1億度)によって冷たかったガスが1000万度もの高温となり、X線を放射している。

2つの尾は、もともと銀河ESO 137-001の腕だったのではないかと考えられている。ガスの引き剥がしは、星の形成を止め、銀河の内側の腕やバルジの見かけを変化させるなど、銀河の進化に相当の影響を及ぼすと考えられている。

画像中、チャンドラがとらえたX線は青、南米チリにあるSOAR望遠鏡がとらえた可視光とHα線(水素の放射)は、それぞれ黄と赤で示されている。Hα線のデータから両方の尾で星形成が起きていることがわかり、銀河団へ落ち込む銀河から冷たいガスが引き剥がされて星形成が引き起こされることを示す、新たな証拠となった。