小惑星どうしの衝突の残骸か、尾を引くX字型の構造
【2010年2月10日 HubbleSite】
ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が、彗星として発見された天体P/2010 A2を観測したところ、X字型の構造がとらえられた。最初彗星に見えたものは、どうやら小惑星どうしの衝突の残骸が尾を引いたものらしい。
先月6日に米・マサチューセッツ工科大学リンカーン研究所のLINEARサーベイが彗星のような天体「P/2010 A2」を発見した。続いて、HSTが1月25日と29日に同天体を撮影したところ、X字型の複雑な構造がとらえられた。彗星のような天体に、このような複雑な構造が見られたのは初めてのことで、なにか通常とは異なるプロセスが起きたのだろうとみられていた。
この構造は、小惑星どうしの衝突の残骸と考えられている。衝突を起こしたのは、あまり氷を含んでいない岩石質の天体だったようだ。
米・カリフォルニア大学ロサンゼルス校の主任研究員David Jewitt氏は、HSTがとらえた画像について次のように説明している。「通常の彗星のまわりに見られる一様な外層とは大きく違います。これらの物質は、おそらく最近放出されたばかりのちりや岩石の粒です。その一部は、太陽光に飛ばされて完全に後方を向いています。いっしょに動いている小さな塊は、衝突を起こした小天体に由来するものでしょう」。
また、ちりの外層の外側にはP/2010 A2の核が見えている。小惑星どうしの衝突は、平均秒速約5kmと計算されている。直径140mほどのP/2010 A2の核は、そのような高速の衝突に持ちこたえたことになる。
彗星は通常、海王星の外側の領域からやってくる。彗星は太陽に接近するにつれて熱せられ、表面の氷が蒸発し、中心の核からは物質がジェットとなって放出される。
一方、P/2010 A2は、火星と木星の間にある小惑星帯に属する軌道を持つ。カイパーベルトやオールトの雲は冷たい領域だが、小惑星帯は太陽に近く比較的暖かいので、岩石質の天体ばかりが存在している。
小惑星帯は岩石質の天体どうしが繰り返し衝突し、砕かれてできたと考えられている。同領域には衝突が起きたことを示す証拠が数多く観測されているものの、これまでに衝突そのものがとらえられたことはない。