【訃報】京都大名誉教授 林忠四郎氏
【2010年3月1日 アストロアーツ】
京都大名誉教授で宇宙物理学者の林忠四郎(はやし ちゅうしろう)氏が2月28日、肺炎のため死去されました。享年89歳。林氏は、太陽系の起源や、「林フェイズ」と呼ばれる生まれたての星の進化段階に関する研究などで、輝かしい業績をあげられました。
1920年生まれの林忠四郎氏は、東京帝国大学物理学科を卒業後、京都大学で宇宙物理学の道に進まれました。同大学では、湯川秀樹研究室で助手をつとめると同時に、宇宙物理学教室において宇宙初期における素粒子の反応を研究。1950年には、ビッグバン宇宙論の提唱者でロシア生まれのアメリカ人 ジョージ・ガモフが提唱した元素生成論を訂正されました。
その後、大阪府立大学を経て、京都大学の教授に就任。理論天体物理学の研究グループを率いて、恒星の進化や太陽系の起源などに関する業績をあげられました。林氏の研究により、誕生間もない低温の恒星では星全体で対流が起きていて、表面温度があまり変化しないまま光度が減少していくという進化段階が明らかになりました。この段階は発見者の林氏にちなんで「林フェイズ」と呼ばれています。
林氏は、これら現代宇宙物理学分野における貢献が評価され、1970年には英・エディントンメダルを、1986年に文化勲章を受賞されました。エディントンメダルは、理論天文学の分野で業績のあった研究者に、イギリスの王立天文学会から贈られる賞です。
また林氏は自身が日本を代表する研究者であったと同時に、すぐれた指導者でもありました。これまでに、佐藤文隆氏(京大名誉教授)、佐藤勝彦氏(東大名誉教授)、池内了氏(総合研究大学院大学教授)ら、多くの研究者を育ててきました。1996年からは、林氏の寄付金を基に日本天文学会に林忠四郎賞が創設され、優れた業績をあげた天文学者が毎年表彰されてきました。
林忠四郎氏のご冥福を心よりお祈りいたします。