太陽の100兆倍以上の質量を持つ銀河団
【2010年5月7日 ESO】
南米チリにあるラ・シーヤ天文台の2.2m望遠鏡が、銀河団Abell 315に属する銀河やその背景にある数多くの遠方銀河をとらえた。Abell 315の莫大な質量の影響で、背景にある銀河の光の経路が曲げられ、銀河の形がわずかに変形して見える。画像に写っている変形した銀河約1万個の分析から、Abell 315の質量が太陽の100兆倍以上であることが明らかになった。
ヨーロッパ南天天文台(ESO)が管理・運用する、南米チリにあるラ・シーヤ天文台には3つの望遠鏡が設置されている。そのうちの1つ、MPG/ESO 2.2m望遠鏡に搭載されている広視野撮像器(Wide Field Imager)が、くじら座の方向約20億光年の距離にある銀河団Abell 315と、その背景にある遠方の銀河をとらえた。
満月1個分に相当する視野には数千個もの銀河がとらえられており、地球からの距離はさまざまだ。画像上部に見られる銀河は、比較的地球に近く、渦巻く腕や銀河を取り巻く楕円形の構造(ハロー)などを見分けることができる。一方、もっとも遠いものは地球から80億光年からそれ以上の距離にあるため、かすかな染みのようにしか見えない。また、画像中央から下方、および左側に見える黄色っぽい銀河100個ほどの集まりは、Abell 315の一部である。
Abell 315を含め、銀河団の質量中に銀河が占める割合はたった1割。さらに、銀河間にある高温のガスが1割。残る8割は、目に見えない正体不明の「暗黒物質」である。銀河団は、宇宙において重力で物質が集まったもっとも大きな構造だが、そこには目で見ることのできる以上の物質が大量に存在しているのである。
銀河団の質量のほとんどを占める暗黒物質の存在は、重力レンズという現象を通じて知ることができる。銀河団の莫大な質量は、背景にある銀河の光の経路を曲げてしまう。そのため、背景にある銀河の形がわずかに変形して見える。そのゆがんだ形を観測・分析することで、銀河団の質量を推測することができる。
ただし、その影響はわずかで、有意な結果を得るには膨大な数を調べる必要がある。Abell 315の場合、画像にとらえられた約1万個もの銀河が分析された。その結果、銀河団の質量が太陽の100兆倍以上であることが明らかになった。