超新星爆発で放たれた「美しき銃弾」

【2010年5月27日 Chandra Photo Album

16万光年先の大マゼラン雲にある超新星残骸N49のそばに、銃弾のような小さい残骸が見つかった。不規則な形状で起こった超新星爆発のようすや、発見例の少ない「軟ガンマ線リピーター」の解明について、大きなヒントを与えてくれそうだ。


N49

チャンドラによるX線画像(青)と、HSTの可視光画像(黄色と紫)を重ね合わせた画像。クリックで拡大(提供:X-ray: NASA/CXC/Penn State/S. Park et al. Optical: NASA/STScI/UIUC/Y.H. Chu & R. Williams et al.)

X線天文衛星チャンドラがとらえた超新星残骸N49の、新しい画像が公開された。N49は大質量星の爆発によって形成された天体で、爆発から約5000年たった姿がとらえられている。

図中、残骸のすぐ右脇に見えるのが、超新星爆発の際に散らばったとみられる「銃弾」のような天体で、米ペンシルバニア州立大学のSangwook Park氏を中心としたチームの観測により発見された。N49自体もいびつな形をしているが、この「銃弾」の発見で、この残骸の起源となった爆発が全方向に均一ではなくかなり不規則な形でひろがっていったことがわかる。

この「銃弾」は図中の真ん中上あたりにある光点から時速800万kmで遠ざかっているが、この光点は「軟ガンマ線リピーター(SGR)」と呼ばれる種類の天体とみられている。SGRはX線やガンマ線を繰り返し爆発的に放射するパルサーの一種で、現在までに数個程度しか発見されていない。

その正体はひじょうに強力な磁場を持つ中性子星の一種だというのが有力な見方だが、超新星爆発の際には中性子星が作られることが多いので、SGRが超新星残骸に見られることは不思議なことではない。「銃弾」が光点から遠ざかっているという観測結果も、この光点が超新星爆発でできたものである(つまり、SGRが超新星残骸の中に存在している)ことを裏付けている。

ただしこの光点は、超新星残骸の中に存在するにしてはガスによる減光の度合いが強い。もしかしたら、この残骸の向こう側(奥)にあり、透けて見えているのかもしれないということだ。