渦巻銀河NGC 247は思っていたよりも近かった?
【2011年3月8日 ESO】
ちょうこくしつ座銀河群の銀河NGC 247の距離が、これまで考えられていたよりも100万光年以上近いことがわかった。これは、NGC 247中のダスト(塵)で光が吸収されることを考慮に入れることによって距離の見積もりがより正確になったためである。
NGC 247はちょうこくしつ座銀河群に属する銀河である。ちょうこくしつ座銀河群は、太陽系のある銀河系を含む局部銀河群(注1)からもっとも近い銀河群だが、そこまでの距離を測ることは非常に難しかった。
1000光年を超えるような遠くにある天体までの距離は、ケフェイド変光星(注2)を使って測ることが多い。しかし地球と観測対象の間にダストがあった場合、ダストによって減光されてしまう分だけ見かけが暗くなるため、より遠くにある天体だと誤って判断してしまうことがある。とくにNGC 247の場合、銀河を斜めから観測する位置関係のために銀河中のケフェイド変光星の光が銀河のディスク(円盤)部分を通ってくることになり、ディスクに含まれるダストの影響が大きくなるため、問題となっていた。
アメリカ、チリ、ヨーロッパの研究者による「アラウカリア・プロジェクト(Araucaria Project)」で、チリにあるヨーロッパ南天天文台(ESO)の大型望遠鏡(VLT)の観測データを使って距離を測定する際に影響を与えてしまう要因を詳しく調べたところ、NGC 247までの距離が1100万光年とこれまでの測定より100万光年近い距離にあることがわかった。
天文学にとって天体までの距離を正確に測ることは極めて重要なことであるが、同時に非常に難しいテーマであることを、この研究で改めて感じさせてくれると言えよう。
注1:「局部銀河群」 銀河系やアンドロメダ座大銀河など含む大小40以上の銀河の集団。
注2:「ケフェイド変光星」 一定の周期で明るさが変動する星で、いくつかのタイプがある。変光周期と真の明るさの間に関連があり、その真の明るさを見かけの明るさと比較することで距離の見積もりに用いることができる。