彗星探査機「スターダスト」、運用終了

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【2011年3月25日 NASA

1999年に打ち上げられ彗星の観測やサンプルリターンなどで活躍したNASAの彗星探査機「スターダスト」の運用が、3月25日に終了した。


(最後の燃料噴射をしているスターダストのイメージ図)

最後の燃料噴射をしているスターダストのイメージ図。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech)

1999年に打ち上げられたNASAの彗星探査機「スターダスト」が運用を終了した。

スターダストはヴィルト彗星(81P/Wild)のコマから採集したサンプルを携えて2006年地球に帰還し、カプセル分離後に再び地球を離れ、今年2月には延長ミッションとしてテンペル彗星(9P/Tempel)を観測、別の探査機「ディープインパクト」(注1)観測時からの変化を探った。

このスターダストが持ち帰ったヴィルト彗星の塵は、アポロ計画で持ち帰られた月のサンプルに次いで人類が2番目に地球外で直接採取した非常に貴重なサンプルであり、初期太陽系の姿を探ることに大きく貢献している。

探査機は運用終了後もデブリ(宇宙ゴミ)とならないよう安全性を確保することが大切で、「はやぶさ」やガリレオ(注2)などのように大気圏に突入して燃え尽きさせたり、安全な軌道を確保してから通信を遮断したりする。スターダストの最期は少し変わったものであった。最後に燃料を使い切る「実験」を行ったのだ。146秒間エンジンを動かすことができ、推進剤を使いきった。実際の残りと見積もりの差異を知り、燃料の消費量を正確に求めることで今後の探査機プロジェクトに役立てられる。3月24日16時33分(太平洋夏時間、日本時間3月25日8時33分)に最後のデータ送信を行った。探査機は燃料がないと太陽電池パネルを正しい向きに固定することができず、地球と通信を行うこともできなくなってしまうため、これが最後の通信となる。

スターダストは今後100年は地球に270万km、火星には2100万kmは近づかないと予想されている。このような軌道を取っているのは、NASAの天体保護(注3)の指針により地球外の天体に生物や生物の前駆物質の汚染を避けるためである。

注1:「ディープインパクト」 2005年にテンペル彗星に衝突体を発射し、衝突で発生した塵を観測する探査を行った。

注2:「ガリレオ」 1989年にNASAが打ち上げた、木星とその衛星の探査機。2003年に姿勢制御用の燃料がなくなったため木星の大気圏に突入させられ、探査を終了している。

注3:「天体保護(Planetary Protection)」 役目を終えた探査機も月や火星、エウロパなど地球外の天体を地球の微生物やその痕跡となるような物質で汚染しないようにしなければならない。