寿命を迎えた2つの星から1つの新しい星が誕生間近
【2011年4月8日 CfA Press Release】
これまで見つかった中で最も速い、39分で互いの星の周りを回る白色矮星の連星系が発見された。今後このペアは衝突し、新しい星として再び輝きだすものと考えられる。
超新星爆発を起こすほどの質量がない比較的軽い恒星は、進化の過程で赤色巨星になり、その後で周りのガスを放出して白色矮星という高密度の天体(注1)になる。こういった白色矮星同士がペアとなっているものが、1000億個もある天の川銀河の星のうちわずかではあるが見つかっている。
今回発見されたのは、くじら座の方向7800光年の距離にある白色矮星のペアで、わずか39分で互いの周りを1周している。ともにヘリウムでできていると考えられ、一方の白色矮星は観測が可能で質量は太陽の17%程度、もう一方の白色矮星は見えないが見えている白色矮星の運動の様子から太陽の43%程度の質量だとわかっている。間隔は14万マイル(約22.5万km)しか離れておらず、地球と月までの距離(約38万km)よりも近い。距離と運動の周期から計算すると、秒速430kmという猛スピード(地球の公転速度は秒速約30km)で互いの周りを回っていることになる。
これほど近い距離で高速に回っているこのペアは、重力波という形で少しずつエネルギーを失っていき、お互いの距離が徐々に小さくなっていく。およそ3700万年以内にはこの2つの白色矮星は衝突・合体しそうだ。衝突の際には超新星爆発を起こすものもありそうだが、このペアの場合は爆発を起こすのにじゅうぶんな質量がないため、ヘリウムを原料として再び核融合を始め、輝きだすと考えられる。生涯を終えつつある2つの星から新しい星が生まれるというわけである。
この結果はアメリカ・アリゾナ州にあるMMT天文台(注2)で行われたサーベイプログラムによって得られたもので、他にも10個ほど白色矮星のペアを新発見している。このうち半数程度は衝突段階にあり、(天文学的な意味で)近い将来に超新星爆発を起こすかもしれないとのことだ。
注1:「白色矮星」 地球ほどの大きさで太陽ほどの質量(地球の約33万倍)を持つ。
注2:「MMT天文台」 フレッド・ローレンス・ウィップル天文台のことで、アリゾナ大学とスミソニアン協会が共同で管理している。