イトカワの過去と未来が明らかに 「サイエンス」誌で発表

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【2011年8月29日 JAXA

現在初期分析が進められている小惑星イトカワの微粒子の研究成果が、米科学誌「サイエンス」に掲載発表された。イトカワの起源からその行く末まで、さまざまな事実が明らかになっている。


「サイエンス」誌の表紙

イトカワの微粒子分析に関する論文が掲載された「サイエンス」誌の表紙(提供:Science Magazine)

探査機「はやぶさ」が2011年6月に地球に持ち帰ったカプセル内のA、B2つのサンプル収納区画のうちA室から回収された微粒子の初期分析が日本の各研究機関により進められている。

それらの分析をふまえた6本の論文が、8月26日発行の科学誌「サイエンス」に掲載された。イトカワに到着した「はやぶさ」による観測成果が掲載された2006年6月以来、5年ぶりの「イトカワ特集」となる(参照:2006/6/2 「はやぶさ」の成果が科学雑誌「サイエンス」の特集に!)。

今回発表された研究結果では、イトカワが、もっと大きな天体に別の天体が衝突しその破片が集まって出来たものであることがわかった。また、表層物質が太陽風や宇宙線の影響をあまり受けていないことから、イトカワの表面がだんだん失われ小さくなっていっていることも明らかにされた。

掲載されたのは以下の6本だ。

  • タイトル:
    小惑星イトカワの微粒子:S型小惑星と普通コンドライト隕石を直接結び付ける物的証拠
    著者:
    中村智樹(東北大)他
    概要:
    詳細な鉱物学的研究の結果、小惑星イトカワはLL4〜6コンドライト隕石に類似した物質でできていることが判明した。同時にイトカワの起源と形成過程に関する重要な知見が得られた。イトカワの母天体の大きさは現在の10倍以上と考えられ、中心部分の温度は約800℃まで上昇、その後、ゆっくりと冷えた。さらにその後、大きな衝突現象が起こり、再集積したのが現在のイトカワになった。
  • タイトル:
    はやぶさ計画によりイトカワから回収された小惑星物質の酸素同位体組成
    著者:
    圦本尚義(北海道大)他
    概要:
    酸素同位体組成分析により、分析した微粒子は地球とは異なる同位体比を持つことがわかり、地球外物質である事が明らかになった。この分析により、S型小惑星イトカワが、地球に落下する隕石の一種である平衡普通コンドライトのLLまたはLグループの供給源の1つである証拠が得られた。
  • タイトル:
    小惑星イトカワから回収された粒子の中性子放射化分析
    著者:
    海老原充(首都大東京)他
    概要:
    中性子放射化分析の結果、重要な元素の含有量が求められ、太陽系最初期に起こった元素の分別過程を保存している事が判明した。
  • タイトル:
    はやぶさサンプルの3次元構造:イトカワレゴリスの起源と進化
    著者:
    土`山明(大阪大)他
    概要:
    X線マイクロCTにより分析した微粒子の3次元外形は、小さな重力しか持たない小惑星のレゴリスの特徴を有しており、レゴリス粒子の起源や進化が読み取れること、また、内部構造と構成鉱物の比率から、LL5あるいはLL6コンドライトに類似した物質である事がわかった。
  • タイトル:
    イトカワ塵粒子の表面に観察された初期宇宙風化
    著者:
    野口高明(茨城大)他
    概要:
    微粒子のごく表面付近を特別な電子顕微鏡で観察した結果、宇宙風化によって作られた特有の元素を含む鉄に富む超微粒子の存在が確認された。これは宇宙風化の直接的証拠であり、LLコンドライトが宇宙風化を受けると、S型スペクトルをもつようになる事が明らかにされた。
  • タイトル:
    はやぶさ試料の希ガスからわかった、イトカワ表層物質の太陽風および宇宙線照射の歴史
    著者:
    長尾敬介(東京大)他
    概要:
    微粒子に含まれる太陽風起源希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン)の分析結果により、これら粒子がイトカワ表層起源であることを証明した。粒子が表面に露出して太陽風に曝された期間は数百年から数千年である。一方、高エネルギー銀河宇宙線照射の影響は検出限界以下であることから、イトカワ表層物質が百万年に数十cm以上の割合で宇宙空間に失われつつあることがわかった。

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