生まれたての星からのジェット噴射を初めて動画化
【2011年9月5日 HubbleSite】
生まれたばかりの星が発するジェットを14年間にわたり数回撮影した画像をつなげることで、その変化の様子が初めて動画化された。これにより、計算機を使ったシミュレーションの結果と今回の「動画」を比較しながら、星の初期段階についてより精密な研究を行うことができるようになる。
通常、天体が繰り広げる現象は人間の一生よりもずっと長期間に及ぶため、その変化の様子をとらえることは難しい。だが今回、原始星が噴き出すジェットと周囲にあるガスが時間とともにその形状を変化させている様子が初めて動画化された(動画は下記〈参照〉リンクから見ることができる)。
原始星(生まれたての星)は、周囲に集まっているガスとダスト(塵)の円盤から物質を吸い寄せて成長しながら、円盤の回転軸と同じ2方向にジェットを噴出する(画像2枚目)。太陽も、誕生したばかりのころはこのような現象が起きていたと考えられている。
今回動画化されたのは、オリオン座大星雲近くにあるHH34、HH1、HH2、そしてほ座の近くにあるHH46、HH47というジェットだ。HHとはハービッグ・ハロー(Harbig-Haro)の略で、星からのガスが星間ガスとぶつかった衝撃で形成される小さな星雲状の天体を指す。HH1とHH2、HH46とHH47はそれぞれ同じ原始星から出た別のジェットだ。
HH1とHH2は1994年、1997年、2007年に、HH34は1994年、1998年、2007年に、HH46とHH47は1994年、1999年、2008年にそれぞれ撮影したものを組み合わせて「動画」を作成した。それぞれのジェットは太陽系のおよそ10倍の長さを持ち、時速70万kmという猛スピードでジェットを出している。
これまで行われたコンピューターシミュレーションによると、このようなジェットは一定の速度で流れているのではなく、散発的に、まるで渋滞に巻き込まれた車のように速くなったり遅くなったりしながら流れていることが確認されていた。
今回の動画も、このシミュレーション結果と同じような傾向を示している。前述のような速度の差があるために、バウショックと呼ばれる衝撃波が発生しているのが見える(画像の青い部分)。この動画で、ジェットとその周囲のガスは驚くほど複雑な構造をしていることがわかった。
より詳しい構造を理解するためには、流体に関する情報が必要不可欠になる。そこで研究を主導したPatrick Hartigan氏(米・ライス大学)は、ニューメキシコ州にあるロスアラモス研究所に協力を依頼し、原始星があるような環境下で超音速ジェットが与える影響を確認するための実験を行っている。
「様々な専門分野の科学者が集まることで、原始星という恒星進化の中で非常に重要な段階に関する知見が得られるであろう」とHartigan氏は語っている。