大気観測衛星UARSが地球へ落下、被害報告は今のところなし
【2011年9月27日 NASA】
NASAの大気観測衛星「UARS」が大気圏へ突入し、地球に落下した。その破片は北緯57度から南緯57度という非常に広範囲にわたって落下した可能性があるが、今のところ衛星の落下による被害は報告されていない。
「UARS」は1991年にスペースシャトルで打ち上げられた人工衛星だ。地球の上層大気の、主に光化学研究のための観測を14年間にわたって行い、数々の成果を挙げてきた。2005年に科学衛星としての役目を終えた後、地球の周りを徐々に高度を下げながら回っていたが、先日24日に地球へと落下した。
ただの衛星の落下であればそれほど話題にならないのだが、この「UARS」は重さが約6トンもあり、またその軌道が地球の人口密集地帯も通っていたことから、燃え尽きなかった破片による被害も予想され、日本政府が内閣官房情報連絡室を設置するなど、注目を浴びていた。
太陽活動などさまざまな自然的要因により、「UARS」の軌道は大気圏突入の直前まで予測するのが難しかったが、最終的に衛星が通った軌道はJSpOC(統合宇宙作戦センター)の予測の範囲内であった。
衛星の破片は北緯57度から南緯57度という広範囲にわたって落下した可能性があり、具体的にどこに落ちたかはわかっていない。しかしNASAによれば、通った軌道に対して幅800km程度の範囲に落下し、今のところ被害は報告されていないという。
今回落下した「UARS」よりも重くて制御不能な落下物はそれほど頻度は高くないが、今後も時々発生すると見込まれている。NASAをはじめとして、複数の機関が衛星の動きをモニターしており、人類が宇宙に進出してから人工衛星の落下による被害は現在まで報告されてない。