星団から弾き飛ばされた「暴走星」 大質量星の故郷が明らかに
【2011年11月25日 鹿児島大学】
鹿児島大学とオランダ・ライデン大学が行ったコンピュータシミュレーションで、銀河を高速で暴走する星は若い星団から弾き飛ばされたものだという研究結果が示された。大質量星の多くが星の密集した小ぶりな星団の中で生まれたということを示唆しており、星や星団が作られるしくみを解明するカギとなる大きな成果だ。
私たちの天の川銀河の中には、周囲の天体にくらべて高速で動き回る単独の星が数百個見つかっている。「暴走星(runaway stars:別名「走り去る星」)」と呼ばれるこうした天体の多くは非常に重い星(大質量星)で、太陽の20倍以上という最大級の質量を持つ星のうち実に5分の1がこの「暴走星」だ。これらはどこからやって来て、どのように加速し暴走をはじめたのだろうか。
日本学術振興会特別研究員の藤井通子さん(鹿児島大学大学院理工学研究科)とオランダ・ライデン大学のSimon Portegies Zwart教授が、スーパーコンピュータを用いて「星団から星が飛び出して暴走する」という仮定のシナリオを検証した。すると、シミュレーションで発生した暴走星の質量分布(星の質量ごとに見た、暴走星になる割合)が実際の観測とよく一致しており、この仮定が正しいことが示された。
このシミュレーションでわかった、星団から暴走星が生まれる仕組みは次のようなものだ。星団が作られると、やがてその中心には大質量星が密集する。その中で、連星(重力で結ばれる複数の星)が生まれ、重力の作用で周囲の星(やはり大質量星)を高速で星団の外まで弾き飛ばしてしまう。当然、弾き飛ばされた暴走星は大質量星である割合が高くなる。
こうして、「銀河系を暴走する大質量星は星団から飛び出したもの」ということが示された。暴走していない大質量星もそのほとんどは星団などの星の集まりに付随していることを考え合わせると、「大質量星のほとんどが星団で生まれた」ということが示唆される。これは、いまだ謎の多い大質量星や星団の形成に迫る重要な成果と言える。