色鮮やかにひしめく宝石 球状星団M9
【2012年3月26日 ESA/Hubble】
100億年近く前に生まれた星々をハッブル宇宙望遠鏡が鮮明にとらえた。2万5000光年かなたの色鮮やかな「宝石箱」が、銀河の歴史を伝えてくれる。
へびつかい座の球状星団M9は、地球から約2万5000光年かなた、天の川銀河の中心付近に位置する(画像1枚目)。1764年にフランスの天文学者シャルル・メシエによって発見されたが、当時はぼんやりとしたシミにしか見えず、メシエの編纂した天体カタログには星雲としてカテゴライズされている。イギリスのウィリアム・ハーシェルによってM9が恒星の集まりとわかったのは18世紀後半になってからのことだ。だが現代になっても、最新鋭の望遠鏡を持ってしても個々の星を見分けるのは難しかった。
今回ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた画像(2枚目)では、1個1個の星々がはっきりと写っている。肉眼ではほんの点のような範囲の中に、25万個以上もの星がひしめく様子が、その色彩の違いまで鮮やかにとらえられているのだ。
球状星団は文字通り星々がボール状に密集している天体だが、M9は強い重力が働く天の川銀河中心にあるため、少し崩れた形状をしている。
プレアデス星団(すばる)に代表されるような「散開星団」は比較的若い星々の集まりだが、球状星団を成す恒星は銀河の中でも最古参のもので、M9の星々は100億年近く前に生まれたと考えられる。
太陽などと比べて重い元素が少なく、とりわけ地球の生命に欠かせない酸素や炭素、また地球の中心核となる鉄などは、M9のような球状星団にはほとんど含まれていない。このような重い元素は、恒星の核融合や超新星爆発を世代ごとに繰り返しながら作られるもので、M9の星々が出来たころは、こうした重い元素がまだ少ない環境だったと思われる。