氷河期明けの「寒の戻り」は天体衝突が原因?

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【2013年5月27日 カリフォルニア大学サンタバーバラ校

今から1万2800年前、氷河期から温暖化に向かう途中の一時的な寒冷期「ヤンガードリアス期」は、天体衝突によってもたらされたという説がある。当時の地層に残った小球体を米大学の研究チームが分析したところ、この説を裏付ける結果が出された。


小球体が見つかった場所を示した地図

調査が行われた小球体は、北米から欧州を中心とした9か国18か所の「ヤンガードリアス境界層」から見つかったものだ。クリックで拡大(提供:YDB Research Group。以下同)

小球体のサンプル

小球体のサンプル。クリックで拡大

約6500万年前に恐竜などの生物が大量絶滅したのは、直径10km程度の隕石が地球に衝突して急激な寒冷化を引き起こしたからだという仮説が有力だ。似たことが、もう少し小規模ながら、比較的最近も起こっていたかもしれない。

最後の氷河期が終わって地球が温暖化に向かっていた時期にも、何度か「寒の戻り」と呼べるような寒冷期が存在した。中でも1万2800年前からおよそ1000年続いたヤンガードリアス期は寒冷化が顕著であったようだ。マンモスなどの巨大ほ乳類の多くが北アメリカ大陸から消えた時期や、同じく北アメリカ大陸で広まっていた石器文化であるクローヴィス文化の終焉と重なることからも注目されている。

ヤンガードリアス期をもたらした原因としては、海洋循環の変化によって赤道付近の暖かい海水が北へ届かなくなったという仮説が有力だった。一方、近年注目されるようになったのが天体衝突説だ。2007年に、クローヴィス文化の遺跡から相次いで炭素を多く含む黒土が見つかったという発表があり、これは小惑星か彗星が北アメリカ大陸に衝突(または衝突直前に空中爆発)したことで地上の植生が焼けた痕跡だと考えられた。しかし、火災の多くは人為的なものだと考えられるので、黒土は天体衝突がもたらしたものとは言いきれない。他にも様々な反論があげられている。

カリフォルニア大学サンタバーバラ校のジェームス・ケネット名誉教授らは新しい証拠を見つけた。砂や岩が高温で溶けてから再び固まったことで形成された、直径1mmにも満たないビーズ状の物体だ。こうした小球体は火山の噴火や雷の落下に伴って作られることもあるが、ケネット名誉教授らは700個近い小球体の成分や磁性を分析して天体衝突以外の要因を反証してきた。

小球体は北アメリカ大陸だけではなく、南アメリカの一部やヨーロッパ、中東にも分布している。天体の落下地点を推定するのはまだ難しいが、ケネット名誉教授は「この証拠は、アメリカの大型動物の大半が悲劇的にも絶滅してしまった主な原因が大規模な天体衝突であることを示し続けています。幾度もの氷河期をせっかく乗り越えた矢先、この天変地異でいなくなってしまったのです」とコメントしている。