史上初、100億光年以上彼方の3D宇宙地図プロジェクト
【2013年8月16日 すばる望遠鏡】
すばる望遠鏡を用いたプロジェクトで、100億光年以上彼方の銀河の三次元分布図が一部完成し、今月公開された。太古の宇宙における大規模構造を調べることで、宇宙の加速膨張の謎解明を目指す。
京都大学、東京大学、オックスフォード大学などの研究者をメンバーとする国際研究チームは、すばる望遠鏡を使った遠方銀河サーベイプロジェクトを進めている。「FastSound(ファストサウンド)」と呼ばれるこのプロジェクトは、満月およそ150個分ほどの空の領域で5000個の銀河の距離を測定し、これらの銀河が存在する100億光年以上彼方、つまり誕生から50億年も経っていないころの宇宙における銀河の三次元分布図を描き出すという計画だ。
こうした宇宙の立体地図作りは、50億光年ぐらいまではスローン・デジタルスカイサーベイ(SDSS)などのプロジェクトによって精密に行われているが、100億光年を超える距離ではFastSoundが世界初となる。
FastSoundの観測は2012年春に始まり2014年春まで予定されている。今月、全プロジェクトのおよそ4分の1の範囲で銀河の三次元分布図が完成し、公開された。天球面方向に6億光年四方、奥行き方向に20億光年にわたる領域で描き出された90億年前の宇宙の大規模構造(網の目のような銀河の分布構造)は、現在の宇宙につながる原始の構造だ。
宇宙は加速的に膨張していることがわかっており、その原因として、未知のエネルギーである「ダークエネルギー」が関与していることや、重力の基本理論である一般相対性理論が宇宙の大きなスケールで破綻している可能性などが考えられている。
FastSoundで銀河の運動を精密に測り、大規模構造の成長速度が一般相対性理論での予言と一致しているかを検証することで、こうした宇宙の加速膨張の謎がだんだん明らかになってくると期待される。