アルマ望遠鏡、炭素原子をとらえる受信機で初観測
【2013年9月3日 国立天文台】
今年4月に行われたアルマ望遠鏡の試験観測で、日本が開発したサブミリ波受信機が初画像を取得した。星雲中心部の炭素原子の分布が詳細にとらえられている。
2013年4月に行われたアルマ望遠鏡の試験観測で、国立天文台が開発した3つの受信機のうちのひとつ、サブミリ波(バンド8)受信機による初の電波画像が得られた。観測の対象となったのはさそり座の惑星状星雲NGC 6302(通称バグ星雲、バタフライ星雲とも)で、中心の星の周りに広がる炭素原子が放つ周波数492GHzの電波をとらえた。
この周波数の電波画像が複数のパラボラアンテナにより高分解能画像を得られる電波干渉計で取得されたのは、今回が初めてだ。アルマ望遠鏡によって炭素原子の分布をこれまでよりずっと詳細に知ることができると期待される。
NGC 6302は太陽の数倍の質量をもつ星が一生の終末期にガスを噴き出してできた惑星状星雲だ。可視光で見ると(画像左上)、星から蝶の羽のような形に噴き出した高温のガスが輝いているのがわかる。過去の観測からは、この星雲の中心部にある星の周りをガスと固体微粒子(ダスト)でできた円盤が取り巻いていることが指摘されており、今回のバンド8受信機でも炭素原子が狭い範囲に集中して分布しているようすがとらえられた。
水素原子や酸素原子などと反応してさまざまな複雑な分子を作る炭素原子の分布を詳しく調べることで、この星雲内での様々な分子の合成反応を解き明かすヒントが得られるはずだという。