アルマとハッブルが見た原始宇宙の巨大ガス天体「ヒミコ」

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【2013年11月26日 国立天文台

宇宙誕生8億年後の巨大ガス天体「ヒミコ」が、宇宙に当初から存在していた水素やヘリウムといった原始ガスを主体としていることがわかった。銀河が作られる最初の過程を明らかにするうえで重要な知見となる成果だ。


可視光・赤外線で観測されたヒミコ

(左)ハッブルが撮影したヒミコ周辺(右上)左画像四角部分の拡大図。紫色から青色をした3つの星の集団が左右に並ぶ(右下)すばる望遠鏡(青)、ハッブル宇宙望遠鏡(緑)、スピッツァー宇宙望遠鏡(赤)で観測されたカラー画像。熱く輝く水素ガス雲(赤色)は5万5000光年にわたって広がる。クリックで拡大(提供:NASA/ESA/NAOJ/東京大学(大内正己))

ヒミコの想像図

今回の観測をもとに描いたヒミコの想像図。原始的なガスが渦巻く中で3つの星の集団が作られている(提供:国立天文台)

2009年にすばる望遠鏡で発見された天体「ヒミコ」は、宇宙が誕生してからわずか8億年の時代に存在した熱いガスのかたまりだ。5万5000光年の大きさと太陽の数百億倍の質量という巨大なサイズから、初期宇宙において銀河がまさに形づくられる段階にあるきわめて特徴的な天体として注目を集めてきた。一方で、これほど巨大なガス雲を高温で輝かせるそのエネルギー源については謎のままだった。

東京大学宇宙線研究所の大内正己さんら日米の研究チームが、このヒミコの観測研究を行った。

ハッブル宇宙望遠鏡の画像(画像1枚目左)では、3つの星の集団が並び、巨大な水素ガス雲に包まれているようすがわかる。ハッブルと天文衛星「スピッツァー」の赤外線観測で、1年に太陽約100個分ものガスを材料として星が作り出されていることが明らかになり、こうした激しい星形成活動が周囲のガスを温めつづけているとみられる。

だが一方で、アルマ望遠鏡の電波観測では、活発な星形成銀河に見られるような固体微粒子や炭素原子ガスがまったく検出されなかった。ヒミコは水素やヘリウムなどの原始的なガスを主体とする天体であり、炭素や酸素などの重い元素はわずかしか含まれていないと考えられる。

「原始的なガス」とは、宇宙誕生とともにビッグバンとともに作られた軽い元素のことで、その後恒星が生まれ、その核融合反応で合成されたのが炭素や酸素などの重い元素だ。「もしヒミコが重元素をほとんど含まない天体であればこれは画期的な発見で、ヒミコはまさに形成中の原始銀河なのかもしれません」(大内さん)。