岩石調査でさらに明らかになる火星の過去
【2013年12月10日 NASA】
探査車「キュリオシティ」の火星着陸から1年半足らず。その岩石調査から、かつて微生物に適した環境だったとされる火星の過去のがさらに詳しく明らかになっている。
かつて水に富み、微生物を育みうる環境にあったと考えられている火星。2012年8月の着陸以来、この赤い惑星の過去を物語る決定的な手がかりを数多く発見してきた探査車「キュリオシティ」のデータから、新たな研究成果が発表された。
カリフォルニア工科大学のKenneth Farleyさんらは、今年5月にキュリオシティが岩石に穴を開けて採取したサンプルから、岩石の年齢を38億6000万年〜45億6000万年と割り出した。これは、キュリオシティがいるゲール・クレーターで以前から推定されていた範囲内の数値だ。
これまで火星の地表の年齢は、直接岩石調査が行われた月とクレーター痕の数を比較することで推定されていた。今回地球以外の惑星で初めて、岩石の鉱物組成から直接、年齢の特定が行われたことになる。
Scott McLennanさん(ストーンブルック大学)やDavid Vanimanさん(惑星科学研究所)らの研究では、ゲール・クレーターの縁から流れた水で湖ができ、粘土鉱物が生成・堆積した歴史が明らかにされた。岩石組成の分析から粘土鉱物が下流で生成されたことが示され、また地球の湖底にある「スメクタイト」と呼ばれる粘土鉱物が見つかったことから判明した。
Don Hasslerさん(サウスウエスト研究所)らが行った初の火星地表の放射線計測では、1日の線量が0.67mSvという結果が出た。火星までの航行中の計測結果を合わせると、火星までの一度の往復で致死的がんの発症率が5%上昇することになり、国際宇宙ステーション(ISS)など地球低軌道での有人ミッションの基準(3%以内)を越える結果となった。
今後、太陽活動の周期変動や突発的な活発化も含めたデータを取得し、将来の火星有人探査に備えた調査検討が行われる見込みだ。