矮新星かみのけ座AL、6年ぶりのスーパーアウトバースト
【2013年12月16日 VSOLJニュース(307)】
変光星かみのけ座ALの6年ぶりのスーパーアウトバーストが今月6日に13等級で発見され、現在も引き続き観測されている。
VSOLJニュースより(307)
かみのけ座は、名前はある程度知られているものの、「あまり明るい星のないエリア」として知られている星座であるかと思います。かみのけ座の方向は、銀河面を赤道に見立てたときちょうど北極に当たる方向に近く、「天の北極」がある星座なのです。つまりもっとも銀河面から遠いところにある星座の一つといえるわけで、明るい星がほとんどないのもこのことによります。もっともこれは裏を返せば星間物質がほとんどないということでもあるため、このかみのけ座の方向には多くの遠方銀河があります。
このかみのけ座にある変光星の一つ、かみのけ座ALもやはり(あまり遠方ではありませんが)銀河のひとつ、M88のすぐそばにある矮新星です。この天体のアウトバーストはかなりまれで、最近では1995年4月、2001年5月、2007年10月とおおよそ6年ごとにアウトバーストを示しています。
前回のアウトバーストから再び6年がたち、このたびまた、かみのけ座ALがスーパーアウトバーストを始めました。発見したのはイタリアのC. Gualdoniさんで、12月6日に12.74等(V等級)まで明るくなっていました。
かみのけ座ALは矮新星のうちの「や座WZ型矮新星」に属することが知られています。このサブグループはスーパーアウトバースト初期に「早期スーパーハンプ」と呼ばれる軌道周期とほぼ一致する変動が見られることが知られていることから、発見を受けて各地で確認観測が行われました。結果、アメリカのS.Dvorakさん、京都大学のグループなどによって早期スーパーハンプが受かりました。
この天体は引き続きスーパーアウトバーストの状態を続けており、現在はまだ早期スーパーハンプを示しています。しかし、近いうちに通常のスーパーハンプに移り変わると考えられます。
かみのけ座ALの正確な位置は、以下のとおりです。
赤経 12時32分25.8秒 赤緯 +14度20分43 秒(2000.0年分点)
まだ明け方の空にしか観測できないためか、重要な天体であるにも関わらず意外に観測がなされていないようです。しかし、近年の矮新星に関する理論的研究から、通常のスーパーハンプの初期における観測が系についての情報を知るうえでひじょうに重要な段階であることが判明しており、早期スーパーハンプから通常のスーパーハンプ初期の観測はひじょうに重要なデータとなりえます。今後さらに観測が望まれます。
矮新星かみのけ座ALの位置
この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して位置を確認できます。ご利用の方は、ステラナビゲータを起動後、「恒星」ダイアログで「変光星」の表示をオンにしてください。
その後、検索バーに「AL Com」と入力して虫眼鏡アイコンをクリックすると、星図の中央にかみのけ座ALが表示されます。ただし、ひじょうに暗いので、視野を狭くし星図の表示等級を大きく設定してください。