小惑星イトカワ、ラッコの頭は重かった
【2014年2月6日 ヨーロッパ南天天文台】
探査機「はやぶさ」が世界で初めて表面物質を持ち帰った小惑星イトカワ。「はやぶさ」が間近で見た詳しい形状と、地上での長期間にわたる観測でとらえられたわずかな自転の加速から、密度の異なる2つの部分に分かれているという証拠が初めて得られた。
2005年に探査機「はやぶさ」が行った接近観測から、小惑星(25143)イトカワは長さ540mのピーナッツ型の天体で、12時間周期で自転していることがわかっている。こうした不規則な形状を持つ天体の場合、不均一な熱放射により自転速度が変化すると考えられている(注)。
これを確かめるため、英・ケント大学のStephen Lowryさんらは、チリのラシーヤ天文台の新技術望遠鏡(NTT)で2001年から2013年までに観測したイトカワの光度データから、その自転速度を精密に計測した。その結果、イトカワの自転がほんの少しずつ速まっていることがわかった。
研究ではイトカワの自転周期が1年に0.045秒ずつ縮まっていることがわかったが、これはイトカワの2つに分かれた部分が異なる密度を持っているとしか考えられない結果だという。2つの天体が衝突合体してできたという説など、イトカワの形成過程を探る強力なカギとなる。
小惑星内部の密度の違いがはっきり確認されたのはこれが初めてのことで、太陽系小天体の成り立ちを探るうえでも重要な成果となった。
注:「YORP効果」 小天体が受ける太陽光の圧力と天体からの熱放射のバランスが天体の場所によって異なるために、小天体の自転速度が変化するような効果が生じる。これをYORP効果と呼ぶ。