ゆるやかに分裂していった小惑星
【2014年3月7日 HubbleSite】
昨年後半から今年初めにかけてゆっくりと崩壊していった小惑星の姿をハッブル宇宙望遠鏡がとらえた。自転速度が増して遠心力でばらばらになっていると考えられ、小惑星のもろい内部構造がうかがえる。
ハッブル宇宙望遠鏡が、小惑星がばらばらに砕け散っていくようすを初めてとらえることに成功した。昨年末のアイソン彗星(C/2012 S1)など、太陽に接近した彗星が崩壊、消滅するようすはたびたび観測されているが、小惑星帯の天体ではこれまでに例がない。
2013年9月に2つの観測サーベイで発見されたこの小惑星は、P/2013 R3という彗星の認識符号が付けられているが、その実体は主に岩石でできた小惑星だ。発見後、広がる塵のもやの中で10個以上の破片がゆっくりと(相対速度は時速約1.6km)ばらばらになっていくようすが観測されていた。天体同士の衝突で見られるような突発的変化ではないことから、太陽光の影響でじょじょに自転スピードが速まり(YORP効果)、遠心力で崩壊したと考えられる。同様のプロセスの実例としては、同じくハッブル宇宙望遠鏡によって塵の尾の変化がとらえられた小惑星P/2013 P5に続くものだ。
こうした現象から、この小惑星は、大昔の天体衝突で作られた岩石の破片がゆるく集まって形成されたものと推測される。1km前後以下の小型小惑星のほとんどはこうした「ラブルパイル構造」をしていると考えられている。
やがて小惑星はこなごなになり、20万tの流星塵となって太陽系を漂う。ほとんどは太陽に吸い込まれていくが、その一部は地球の夜空で流れ星となって輝くのかもしれない。
P/2013 R3の位置
この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して位置を確認できます。「ツール」メニュー→「データ更新」で新天体データを取得し、「P/2013 R3」を検索・表示してください。