超新星2014Jのガンマ線で探る、Ia型爆発の仕組み
【2014年8月4日 京都大学】
今年1月おおぐま座の銀河M82に出現した超新星2014Jの観測から、爆発後早い段階で放射性元素の崩壊にともなうガンマ線のシグナルが検出された。星の表面付近での核反応が星全体の爆発の引き金になった可能性を示すもので、Ia型超新星の爆発の仕組みについて新たな疑問を投げかけている。
星の最期の大爆発である超新星のうち、Ia型(核暴走型)とよばれるものは、星の燃えかすである「白色矮星」ともう1つの星との連星系で起こる。通常の恒星であるパートナー(伴星)から物質を奪う、あるいは相手も白色矮星でお互いに衝突合体するなどして白色矮星の質量がある一定の限界値を超えると、白色矮星の内部で核反応の暴走が引き起こされ、爆発に至ると考えられている。だがどのように核反応暴走の引き金が引かれるか、詳しくはまだ解明されていない。
前田啓一さん(京都大学)らの国際研究チームは、今年1月におおぐま座の銀河M82に出現したIa型超新星「SN 2014J」を人工衛星「インテグラル」でガンマ線観測した。すると爆発から約18日の段階で、爆発生成物質ニッケル56(56Ni)の放射性崩壊にともなうガンマ線が早くも検出された。白色矮星の中心付近から核反応が始まるという従来の考えからすれば、ニッケル56を由来とするガンマ線は爆発後数か月間は周囲の物質に隠されて見えないはずなので、この結果は意外なものだった。
これを説明するために研究チームが導き出したシナリオは以下のようなものだ。白色矮星に流れ込んだ物質が赤道面表面で蓄積され、その中で核反応が点火される。その時に比較的少量のニッケル56が作られ、これが爆発初期に観測されたガンマ線の由来となる。さらに、表面での核反応が白色矮星の中心部まで伝わり、星全体が吹き飛ぶ超新星爆発の引き金となる。
Ia型超新星の核反応によるガンマ線検出は、このSN 2014Jが初の観測例だ。今後は、超新星SN 2014JがIa型超新星爆発として普通なのか特殊なのか、また提案された爆発シナリオの正否やその影響などについて、詳しく検討が進められる。