SDSS新段階へ 銀河地図作成プロジェクト「MaNGA」など始動

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【2014年8月21日 IPMU

宇宙規模の銀河分布図作成などを行ってきた「スローン・デジタル・スカイ・サーベイ」が、新たな段階に突入した。新開発の機器を導入してさらに詳細、広範囲の観測を行う3つのプロジェクトが始動している。


新開発の光ファイバー結束技術を活用した「MaNGA」プロジェクト

新開発の光ファイバー結束技術を活用した「MaNGA」プロジェクトでは、1つの銀河内の複数箇所(画像右下)の分光観測を行う。クリックで拡大(提供:David Law, SDSS collaboration, and Dana Berry/SkyWorks Digital, Inc./図中銀河画像 NASA, ESA, the Hubble Heritage (STScI/AURA)-ESA/Hubble Collaboration, and A. Evans (University of Virginia, Charlottesville/NRAO/Stony Brook University))

「eBOSS」プロジェクト

SDSSではこれまで、宇宙誕生から20億年〜30億年後、70億年後〜現在までの範囲の地図作成が進められてきた。「eBOSS」プロジェクトでは30億〜70億年後の間の銀河やクエーサーの分布図を作成する。宇宙が加速的な膨張を始めた重要な時期だ。クリックで拡大(提供:SDSS collaboration and Dana Berry / SkyWorks Digital, Inc./WMAP宇宙マイクロ波背景放射画像 NASA/WMAP Science Team)

これまで14年間にわたり史上最大の宇宙地図を作ってきた「スローン・デジタル・スカイ・サーベイ」(SDSS)が、新開発の機器を導入してさらに詳細、広範囲の観測を行う新たな段階(SDSS-IV)に突入した。

今回始まった観測プロジェクトのひとつ「MaNGA」(アパッチポイント天文台近傍銀河地図作成)では、米・ニューメキシコ州のスローン財団2.5m望遠鏡に新開発の結束光ファイバーを用いた観測装置を組み合わせ、1つの銀河の中の最大127点を同時に分光観測することが可能となった。従来のほとんどの観測では、1つの銀河につき1点の分光観測結果を得られるだけだったのに比べて大きな進歩だ。銀河の中の星とガスの分布図を作ることで、何十億年もかけて形成された銀河の成長の仕組みを解明していく。

MaNGA以外のプロジェクトもスタートしている。「APOGEE-2」プロジェクトでは、スローン財団望遠鏡に南米チリの望遠鏡が加わり、これまで観測できなかった領域も含む天の川銀河全体の星の運動を詳しく調べる。

「eBOSS」プロジェクトでは、宇宙誕生30億年後における宇宙膨張のようすを詳細に測定し、現代物理学において最大の謎のひとつである「ダークエネルギー」の正体解明に迫る。

世界各地の40以上の研究機関から200名以上の研究者が参加するSDSSにより、私たちが知る宇宙、銀河、天の川銀河の姿が今後も描き変えられていくことが期待される。