巨大星のゆりかごと巨大なガスの渦巻き

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アルマ望遠鏡による観測で、巨大星が集団で誕生しているとみられる場所に、高密度のガスの塊を取り巻く3光年を超えるガスの腕が見つかった。ガスの腕が巨大星のゆりかごであることを示しており、巨大星がどのようにガスを獲得して成長していくのかを明らかにする観測成果である。

【2015年5月26日 アルマ望遠鏡

巨大な星団ができるためには大量のガスが効率よく星になる必要があるが、星が生まれると星の材料となるガスが恒星風で吹き飛ばされてしまうため、ガス雲の崩壊と星の誕生は非常に短期間で急激に起こらなくてはならないと考えられてる。つまり、ある程度の期間ガス雲が重力崩壊せず、一気に中心部に流れ込むということだ。ガス雲の重力崩壊に抗う力としては、もともとガス雲が持っている回転の勢い(角運動量)が考えられるので、回転している構造を見つけることが巨大星団の観測研究において重要となる。

台湾中央研究院天文及天文物理研究所のハウユー・リュウ氏らの研究チームは、わし座の方向約2万3000光年彼方にある明るく巨大な星が集団で生まれている領域(OBアソシエーション)「G33.92+0.11」を対象に研究を行った。この領域全体の明るさは太陽の25万倍もあるが、その大半は2、3個の巨大な星によるものである。まず、赤外線天文衛星「ハーシェル」などのデータを解析してG33.92+0.11の周りの塵やガスの分布を明らかにし、2本のガスの腕が若い星団の南北に伸びていることを突き止めた。大量のガスがこの腕を通じて星団中心部に流れ込んでいるとみられる。

次にこの領域の中心部(G33.92+0.11A)をアルマ望遠鏡を使って高解像度で観測し、太陽の100倍から300倍の質量をもつ巨大なガスの塊を2つ発見した。さらに、これらのガス塊がいくつかのガスの腕でつながれていることも明らかにした。若い星の周りの渦巻腕構造は小質量星「L1551NE」の周りにも見つかっていたが(アストロアーツニュース:「双子の赤ちゃん星を育むガスの渦巻き」参照)、今回のものはそれに比べて100倍から1000倍ほど大きい。

G33.92+0.11Aのガスの腕は分裂途中にあるとみられ、2つの大きなガス塊の周りを取り巻く衛星のような構造も見えている。アセトニトリル、硫化炭素、シアン化重水素といった分子ガスの観測結果からは、ガスの温度や密度が場所により大きく異なっているようすがとらえられており、中心部では星が生まれて高温になっている一方、北側の衛星ガス塊は比較的低温であることもわかった。

(左)塵の分布、(右)アセトニトリル(CH3CN、黄)、硫化炭素の同素体(13CS、緑)、シアン化重水素(DCN、紫)といった分子ガスの分布
(左)塵が放つ電波、(右)アセトニトリル(CH3CN、黄)、硫化炭素の同素体(13CS、緑)、シアン化重水素(DCN、紫)といった分子ガスの分布。電波観測データを擬似カラー化したもの(提供:ALMA(ESO/NAOJ/NRAO), H. B. Liu et al.)

研究グループでは、G33.92+0.11Aの中心約3光年程度は平らな構造をしており、質量の大きなガス塊に向かって腕を経由してガスが流れ込んでいると考えている。また、ガスの回転にともなう遠心力によってガス流の勢いは弱まっているようだが、ガスの腕が分裂することで第2世代の巨大星たちがここで生まれる可能性もあるのではないかと考えている。

(左)大質量星形成領域のガス分布のシミュレーション結果、(右)アルマ望遠鏡で観測したG33.92+0.11Aの塵の分布
(左)大質量星形成領域のガス分布のシミュレーション結果、(右)アルマ望遠鏡で観測したG33.92+0.11Aの塵の分布(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), H. B. Liu, J. Dale)

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