マグネターが生み出す超高輝度超新星の輝き
【2016年3月31日 カブリIPMU】
大質量の恒星は一生の最後に大爆発を起こし、超新星となってたいへん明るく輝く。その超新星の一種である「超高輝度超新星」の中には、通常の超新星の10倍から100倍も明るいものがあるが、その高輝度を生み出すエネルギー源や爆発のメカニズムについては論争が続いている。
こうした超高輝度超新星のなかに、特異な特徴を持つものがある。2011年に発見された超新星「SN 2011kl」は、爆発の際に生じたガンマ線バーストが数時間も続いたという、たいへん珍しい超新星の第1号だ。一方、2015年に発見された超新星「ASASSN-15lh」は、これまで見つかっている超新星のうち最も明るく強力なもので、通常の超新星の明るさの500倍、天の川銀河全体の明るさの20倍に相当する輝きを1か月以上にわたって保ち続けた。
この2つの超高輝度超新星については、その強力なエネルギー源はマグネターであるという説が唱えられていた。マグネターは超新星爆発により生まれる中性子星の一種で、強力な磁場を持ち、1秒間に数十回という超高速で自転する特殊な天体である。
アルゼンチン・ラプラタ国立大学および東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)のMelina C. BerstenさんとKavli IPMUの野本憲一さんらの研究グループは、両天体について、マグネターが超高輝度の要因となるという理論モデルを流体力学の計算手法を用いて検証した。
そして、SN 2011klとASASSN-15lhの輝度が時間変化する観測データを、理論モデルで上手く説明することに初めて成功した。マグネターが超高輝度超新星を生み出す要因であることを示唆する結果だ。「超高輝度超新星は宇宙のはるか遠方でも発見可能なので、その爆発機構を理解することは、宇宙の初代星の質量等を理解する手がかりになると期待できます」(野本さん)。
今後は、本成果をもとに理論モデルのさらなる検証を進めるとともに、ハッブル宇宙望遠鏡などによる観測で光度変化を追うことにより、超高輝度超新星を引き起こす恒星の内部構造解明に関する手がかりが見つかるかもしれない。また、超高輝度超新星とガンマ線バーストの関係や恒星進化に関する新しい知見も得られることが期待されている。
〈参照〉
- カブリIPMU: 極度な強磁場を持つ中性子星、マグネターが生み出す超高輝度超新星の輝き
- The Astrophysical Journal Letters: The Unusual Superluminous Supernovae SN2011KL and ASASSN-15L 論文プレプリント
〈関連リンク〉
- Kavli IPMU-カブリ数物連携宇宙研究機構: http://www.ipmu.jp/
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