よくある質問と回答(FAQ)
食分の値が他の日食予報と異なっている
エクリプスナビゲータ Ver.2 で表示される食分の値が、他の資料に載っている値と食い違っているのですが。
これは、皆既食や金環食の間の食分に2通りの計算方法が存在するためです。
一般に部分食の食分は、
食分 = 太陽の視直径のうち月に隠された部分の長さ (MS') / 太陽の視直径 (SS')
で定義されます。
(※ ここでは便宜上、日食の前半、すなわち欠け始めから最大食分までを考えています。後半の食分については前半での位置関係を適宜左右反転させて読み替えてください。)
一方、皆既食や金環食の間の食分については、以下の2通りの定義が存在します。
(A) 部分食と同じく、月の東端と太陽の西端を結んだ線分 (MS') を太陽の視直径 (SS') で割ったもの
食分 = MS' / SS'
(B) 月の視直径 (MM') を太陽の視直径 (SS') で割ったもの
食分 = MM' / SS'
このため、(A) と (B) どちらの定義を使っているかによって食分の値が異なることがあります。
(A) と (B) の定義にはそれぞれ次のような特徴があります。
(A)
- 国立天文台の予報で採用
- 皆既日食の場合、部分食と皆既食の境(第2・第3接触)の前後で食分値が連続的に変わる
- 観測地が日食帯の中心線に近いほど、また時間とともに太陽と月の距離が近づくほど食分値が大きくなる
(B)
- NASA の予報で採用
- 皆既日食の場合、部分食と皆既食の境(第2・第3接触)の前後で食分値が不連続になる
- 観測場所の違いや食の進行に関係なく、皆既食・金環食の状態では食分値が一定
つまり (B) の食分を使うと、「時刻・場所による食分の深さの違い」を取り除いて、その皆既食が「どのくらい月が大きい現象なのか」という効果のみを確認・比較することができます。
半面、(B) の食分は「観測地が日食帯の中心にどれくらい近いか」の目安として使うことはできませんし、皆既食・金環食の最中の「食の進み具合」を表す指標としても使えません。
このように (A) と (B) の計算式にはそれぞれ長所・短所があります。
エクリプスナビゲータ Ver.2.0c では、部分食・金環食の食分を (A)、皆既食の食分を (B) の計算式で表示します。
エクリプスナビゲータ Ver.2.5 以降では、[設定]-[環境設定] で (A),(B) の定義を切り替えることができます。初期状態では (A) で表示します。