冬の夜空といえば、ギラギラと明るく輝くシリウスや、オリオン座のベテルギウス、リゲルなど、にぎやかな星々を思い浮かべます。
機会があれば、シリウスから視線を下げて、地平線や水平線あたりにも注目してみてください。そこには、夜空に輝く星のうち全天で2番目に明るい「カノープス」が輝いています。
目次
カノープスの見つけ方
カノープスが見える時刻
カノープスは南の低空にしか見えず、地平線上にある時間が短いので、南中する(真南に来て地平線から最も高くなる)時刻の前後約30分ほどが観察チャンスになります。
東京での南中時刻は、1月1日は23時20分ごろ、1月11日は22時40分ごろ、1月21日は22時00分ごろ、2月1日は21時20分ごろ、2月11日は20時40分ごろ、2月21日は20時00分ごろ、3月1日は19時30分ごろです(1日に4分ずつ早くなります)。オリオン座のベテルギウスより後で、おおいぬ座のシリウスよりも先です。西の地域ではこれより遅くなり、大阪で約20分後、福岡で約40分後に南中します。
カノープスが見える高さ
東京付近では、カノープスの南中高度はおよそ2度です。南へ行くと高くなり、高知県の足摺岬で約4度、鹿児島市で約6度、那覇市で約11度となります。
反対に、北限よりも北では見ることができなくなります。天球上のカノープスの赤緯は-52°42′(2000年分点)なので、単純計算すれば北限は北緯37°18′(=90° - 52°42′)の地点、福島県いわき市のあたりとなります。
ただし、地平線近くの星の光は大気によって屈折されるため浮き上がって見え、カノープスが見える位置は実際よりも高くなります。この「大気差」も考慮に入れると北限はさらに北になり、新潟県新潟市から福島県相馬市を結んだ線あたり(北緯37°50′付近)となります。山腹など標高が高いところから見ることによって、もっと北からも見えた例があるようです。
カノープスが見える場所
建物や山に隠されると決して見えませんので、南の地平線や水平線が見渡せるところで探しましょう。展望台など高いところから見下ろすと、視界を遮るものが少なくなるので見やすくなりますが、街明かりなどがあると光害の影響で見えにくいかもしれません。
地平線付近は天頂付近に比べて大気による減光の影響が大きいため、カノープスは全天で2番目の恒星とは思えないほど暗くなり、さらに大気越しに見るため夕日と同様に赤っぽく見えます。双眼鏡を使って探すのがおすすめです。
アプリやソフトでカノープス探し
モバイルアプリで探す
iOS用の「iステラ」「iステラ HD」やアンドロイド用「スマートステラ」などのモバイルアプリは、端末を向けた方向の空を画面にシミュレーション表示するので、カノープスが地平線上に現れるかどうかや、どのタイミングで見れば良いのかが一目瞭然です。
「カノープス」を検索すると画面に矢印が表示され、カノープスが見える方向へとナビゲーションしてくれます。
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カノープスとは
カノープスは-0.6等級の白い恒星で、夜空に見える恒星としてはシリウスの-1.4等級に次ぐ全天2番目の明るさを誇ります。しかし、あまりに南寄りの空にあるため、北半球の多くの地域(特にヨーロッパ)では地平線上に昇らず、目にすることができません。比較的緯度が低いエジプト、メソポタミア、インドなどでは観察できるので、存在自体は太古から知られていました。
古代中国の政治的中心地となった黄河流域(現代の西安など)では、カノープスは南の地平線すれすれに現れる奇妙な赤い星として知られていました。見えるときもあれば見えないときもあることや、縁起の良い赤い色であることなどから、中国ではカノープスを「南極老人星」や「寿星」と呼んでいます。
南極老人とは、日本の七福神の寿老人あるいは福禄寿の元になった神様で、長寿をつかさどるとされてきました。そのため、この星を見ることは縁起が良いとされ、とくに、一目見ると寿命がのびるという話が有名です。
一方で、房総半島の南端にある漁村「布良(めら)」などでは、この星は嵐で命を落とした漁師の魂と結び付けて考えられており、「布良星(カノープス)が見えると海が荒れる」という言い伝えもあります。
カノープスは「りゅうこつ座」に含まれる星です。りゅうこつ座は、かつては「アルゴ座」と呼ばれる巨大な星座の一部でした。アルゴ号は、ギリシャ神話に登場する船の名前です。アルゴ号の水先案内人の名前がカノープスだったと説明されることがありますが、これは間違いで、別のギリシャ神話で語られるトロイ戦争で活躍した将軍メネラウスがひきいる船団の水先案内人の名前とされています。また、古いエジプト語で「大地(すれすれにある)黄色(に見える星)」を意味する言葉の変形とする説もあります。