【特集】ふたご座流星群(2023年)

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冬の定番天文現象「ふたご座流星群」。12月14~15日ごろを中心に、たくさんの流れ星が飛びます。

今年は月明かりの影響がまったくないという好条件に、放射点が高い時間帯に極大を迎えるという好条件も重なり、非常に多くの流れ星が飛ぶと期待されます。一晩で100個以上見えるかもしれません。

寒さ対策を万全にして、安全やマナーに気をつけて、流れ星を待ってみましょう。

ピークは15日4時ごろ

2023年のふたご座流星群の活動が最も活発になる「極大時刻」は、12月15日4時ごろと予想されています。つまり、12月14日の宵から15日の明け方にかけて、たくさんの流れ星が見られると考えられます。そのなかでもとくに、流れ星が飛ぶ中心となる放射点(›› 解説)が高い15日1~3時ごろに最も多くなると期待されます。

見える数の予想と見やすさ

14日21時から15日5時まで、南の空を眺めた様子。場所の設定は東京(ステラナビゲータでシミュレーション)。実際には19時くらいから5時くらいまで観察が可能。
[YouTube]

視界が開けていて街明かりの影響が小さい場所では、1時間あたり30~40個程度の流れ星が見えると予想されます。とくに、放射点が高くなり極大時刻に近づく15日1~3時ごろには、1時間あたり50~60個見える可能性もあるでしょう。

新月直後のタイミングなので、月明かりの影響はまったくありません。薄明が終わる14日18時ごろから夜明けが始まる15日5時ごろまで、一晩中ずっと暗い空の下で観察できます。一晩合計すれば100個以上を数えることも、じゅうぶん可能です。

街中や郊外では、街明かりや視界の広さ、空気の透明度なども見え方に影響するため、流星数は空の条件の良いところに比べて半分から3分の1ほどになると予想されます。それでも1時間あたり20個くらいは見えるという予想になるので、大いに期待が持てます。

極大の前後の日に観察すると見える流れ星の数はさらに減りますが、普段の(活発な流星群のない)時と比べれば流れ星を目にできる可能性が高い時期です。夜更かししやすい週末の観察でも、じゅうぶんよく見えそうです。寒い時期なので無理は禁物ですが、暖かい服装で少し長めに空を見上げて流れ星を待ってみましょう。

参考リンク:

1年間の天文現象を解説 「アストロガイド 星空年鑑」

[アストロガイド 星空年鑑 2024]

「アストロガイド 星空年鑑」は1年間の天文現象を書籍と番組で詳しく紹介。シミュレーションソフトで現象の見え方なども調べられます。

春のポン・ブルックス彗星と秋の紫金山・アトラス彗星はどちらも肉眼等級になると期待されるほか、広範囲で見やすい土星食やスピカ食、さらに絶好条件の8月のペルセウス座流星群など、2024年にも楽しみな天文現象がたくさんあります。星空年鑑で、1年分のスケジュールを確認しておきましょう。

観察のポイント

空を広く見渡そう

流星群の流れ星は放射点を中心として四方八方に飛びますが、「放射点の近くだけ流れ星が飛ぶ」のではなく、「流れ星は方角や高さに関係なく、空のあちこちに流れ」ます。いろいろなところに飛んだ複数の流れ星の光跡を反対に(流れ始めた方向に)たどっていくと交わる点が放射点です。

14日21時から15日5時まで、空全体に流れ星が飛ぶ様子。場所の設定は東京(ステラナビゲータでシミュレーション)。

したがって、放射点の方向だけを見るのではなく、広い範囲を眺めることがポイントです。広場や校庭、河川敷など視界の開けたところが観察に適しています。集中しすぎると視野が狭くなってしまうので、なるべくリラックスして空を広く見渡すようにすると良いでしょう。

住宅地や自宅ベランダなど視界が限られるところでは、街灯の光を直接目に入れないようにして、そこから離れた方向を中心に眺めると見やすくなります。また、一般的に低空は街明かりや大気の影響を受けて見え具合が悪くなるので、高いところを眺めるほうが流れ星を見つけやすいでしょう。

15分くらいは見続けてみよう

1時間に30個の流れ星が見えるとすると、計算上は平均して2分に1個のペースで見えることになりますが、流れ方はランダムですので、立て続けに数個見えることもあれば10分以上も見えないことも珍しくありません。1つも見えないからと数分で諦めるのではなく、15~20分くらいは見上げてみましょう(ただし、寒いので無理はしないようにしましょう)。

15日4時に、西→南→東→北→西の空を眺めた様子。場所の設定は東京(ステラナビゲータでシミュレーション)。

20時ごろには天頂付近に木星や「秋の四辺形」が見え、北から東に「カシオペヤ座」や「プレアデス星団(すばる)」などもあります。深夜になると放射点のある「ふたご座」が天頂に、「冬の大三角」や「オリオン座」が南の空に広がり、華やかな星々が流れ星の通り道を彩ります。明け方には南東の空に「しし座」、北東の空に「北斗七星」が高く上ります。東南東の低空に明けの明星の金星も見えるでしょう。こうした星座や惑星の近くに明るい流れ星が飛ぶと、とくに嬉しいものです。ゆったりと星々を楽しみながら、流れ星を待ちましょう。

【特集】木星(2023~2024年)
【特集】明けの明星 金星(2023~2024年)

ステラナビゲータでシミュレーション

天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で、流れ星が飛ぶ様子や周りの星座の見え方を調べたり、撮影の構図を検討したりできます。ぜひご活用ください。

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モバイルツールでシミュレーション

流れ星を待つ間は、星座探しをしてみましょう。iOS/Android用「星空ナビ」などのモバイルアプリを使うと、星や星座の名前がすぐにわかります。

※まぶしくないように、画面の明るさを調整しておくとよいでしょう。

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iOS/Android用
「星空ナビ」
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iPhone/iPod touch用
「iステラ」
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Android用
「スマートステラ」
各社の「アプリ使い放題サービス」でもご利用いただけます

スマートステラでのシミュレーション

12月15日未明の星空の様子をスマートステラで表示。放射点の位置や周りの星座の名前などがわかる。画面に流れ星(シミュレーション)も飛ぶ。画像クリックで表示拡大(黄色の円は流れ星の表示例、複数のキャプチャを合成)。

寒さ対策を万全に

寒さ対策は、ふたご座流星群の観察で一番大切なことといえるかもしれません。寒いと注意力や判断力が低下し、落ち着いて空を見上げるのが難しくなったり動作が鈍って思わぬ事故につながったりすることもあります。

  • 重ね着をし、帽子やマフラー、手袋などの防寒具を用意。
  • 携帯カイロ、夜食、温かい飲み物なども準備。
  • 家の近くで見るのであれば、無理をせず時々室内で休憩を。
  • ヒーター等を利用の場合は明かりや音、安全に気をつけて。

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月刊「星ナビ」で、静止画や動画での流星群の撮影方法、画像処理などを詳しく解説。流星の撮影や流星群画像の編集をしてみたい方は参考にしてください。
※2021年のペルセウス座流星群をテーマにした解説ですが、考え方や手法は同じです。

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オンラインショップ

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そのほかのポイント

  • 流れ星を観察するために長時間夜空を見上げ続けていると首が痛くなります。アウトドア用のチェアやベッドがあればベストですが、安全な場所であればグラウンドシートに寝転がって見るのも快適です(寝袋や断熱マットも使用しましょう)。
  • 大騒ぎしない、車や足元に注意する、子供だけで行動しないなど、マナーや安全にもじゅうぶん気をつけましょう。
  • 各地の天文台などからインターネット中継があります。寒くない、安全、大勢で楽しさを共有できるなど中継ならではのメリットを活かして、自分のところが曇っている場合などには視聴して楽しみましょう。

ベッド

ベッドに寝転んで観察すれば、楽に広い範囲を見渡せます。

流れ星が見える仕組み

流れ星(流星)は、宇宙空間に散らばっている小さな塵(流星物質)が地球の大気圏に飛び込んで大気中の原子や分子と衝突し、上空100km前後でプラズマ発光する現象です。プラズマは大気中の元素と流星物質を構成する元素の両方に由来し、元素の違いが色の違いとなって現れます。

ふたご座流星群とは

一年のうちある決まった時期に、星空の中のある点の付近を中心として流れ星が飛ぶことがあり、こうした現象を流星群と呼びます。確定した流星群は現在約110個が知られていますが、ふたご座流星群はしぶんぎ座流星群(1月4日ごろ)、ペルセウス座流星群(8月13日ごろ)とともに「三大流星群」の一つとして数えられる、活動が活発な流星群です。

ふたご座流星群は、毎年12月14日前後に多くの流れ星が飛びます。活動が安定しており、ほぼ期待どおりに流れ星を見ることができます。「夜が長い時季にあたる」「放射点が一晩中地平線上にあり、深夜に高く上る」ということもあり、寒さを別とすれば一年で最も見やすい流星群といえます。

ふたご座流星群の流れ星。左(画角外)に放射点がある。ゆっくり移動する明るい点は飛行機。2014年12月14日 伊豆大島にて(撮影:大熊正美)。

放射点

流星群の流れ星は、天球上のある点の付近を中心として四方八方に放射状に流れるように見えます。この点を「放射点」と呼び、放射点の位置する(または放射点の近くの)星座や恒星の名称が流星群の名前として付けられます。ふたご座流星群の場合は、ふたご座の2等星カストルの近くに放射点があるので、この名前で呼ばれています。

平行に降る、流星群の流れ星

地球が塵の集まりとぶつかると、流星群の流れ星は雨のように平行に降ります。平行に飛び込んでくる流れ星が放射点を中心として放射状に流れるように見えるのは、一直線の道路の両端が遠方の一点から伸びてきているように見えるのと同じ理由です。

塵が宇宙空間を同じように移動した場合の、流れ星の見かけの動きを考えると、放射点付近では経路が短くなり、放射点から離れるほど経路が長く見えます。とくに放射点では、流れ星は観察者に向かってくるように見えます(静止流星と呼びます)。

※放射点付近では必ず短くなりますが、放射点から離れれば必ず長くなるとは限りません(塵の動きが小さければ、放射点から離れていても経路は短くなります)。

平行に降る流れ星

平行に降る流れ星。画像クリックで表示拡大。

流れ星の実際の動きと見かけの動き

流れ星の実際の動きと見かけの動き。画像クリックで表示拡大。

ふたご座流星群の起源

塵を放出して流星群の原因となる天体を母天体と呼びます。この母天体の軌道と地球の軌道が交差していると、毎年同じ時期に地球がその交点付近を通る際に、塵の集まりと地球がぶつかることになります。したがって、流星群の流れ星は毎年同じころに同じ方向から飛んでくるように見えるのです。

母天体の軌道の一部にだけ塵が集まっていると、年によって流星群の活動に差が見られる(特定の年だけ活発になる)ことになりますが、ふたご座流星群の場合は塵が軌道全体に広がって分布していると考えられます。すると毎年のように多くの塵と地球とがぶつかることになるので、ふたご座流星群は毎年安定して多くの流れ星が見られるのです。

母天体は多くの場合は彗星ですが、ふたご座流星群の場合は約1.4年周期で太陽系を巡っている小惑星ファエトン((3200) Phaethon)と推定されています。一般に小惑星は彗星のように尾をたなびかせ塵を放出することはなく、ファエトンも現在は活動を停止していると考えられていましたが、2013年に活動が観測されたという報告があり、その正体や性質に注目が集まっています。日本では探査機でファエトンを観測する「DESTINY+(デスティニープラス)」というミッションを進めています。

流星群とファエトンの関係

流星群とファエトンの関係。放射点の方向は地球の進行方向ではなく、地球の運動と流星物質の運動を合わせて考えた方向になる。画像クリックで表示拡大。

ふたご座とは

兄カストルと弟ポルックスの双子をモデルとしたふたご座は、ちょうど冬が見ごろの星座です。明るさが近い白色のカストルとオレンジ色のポルックスが仲良く並ぶ光景は夜空でよく目立ち、2つの星には「銀星」「金星」という和名もあります。

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